第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
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うに煌めく異国の大海原。
(キレイ……)
以前、紅世の徒を討滅した時には何も感じなかった風景を、
今はその漆黒の双眸へ鮮やかに映しながら少女は呟く。
それと同時に。
「海は、いいよな……」
いつのまにか立ち止まり、同じ方向を見ていた承太郎が独り言のように呟く。
「海、好きなの? おまえ」
青年に背負われ、同じ方向を見つめている少女が澄んだ声で訊く。
「まぁ、な。この、どこまでも続いてるンじゃあねぇかっていう海原を見てると、
『運命』 だの 『宿命』 だのと考えるのが、何だか取るに足らないちっぽけなモンに
想えるようでよ……」
「……」
潮風と波音に委ねるように一度その瞳を閉じた青年は、
やがて独白のように純然たる意志を込めて告げる。
「いつか、この大海原を、自由に駆けてみたい。
誰に邪魔されるコトもなく、自分の想うがまま、その遙か彼方まで」
「承太郎……」
「『海洋冒険家』 ってヤツか。ソレに、なってみたい。
きっとこの世界には、オレの想像もつかねぇようなモノ凄ェもんが
まだまだ眠っている筈だから」
「それが、おまえの 『夢』 ……?」
「あぁ」
緩やかな表情でそう問うシャナに、承太郎も同じような口調で返す。
そして、波間にたゆたうしばしの沈黙の後。
「……不思議だな」
「え?」
「こんなことを話したのは、おまえが初めてだぜ……」
(――ッッ!!)
月明かりに照らされながら、そう言って淡い微笑を浮かべる青年の風貌は、
美しく気高く、そして何よりも絶対的な存在として少女の瞳に映った。
【3】
紆余曲折あって、結局美女が腰を落ち着けた場所は
自分が予約を取ったホテルの地下2階に在るBARだった。
落ち着いた大人の雰囲気をより一段シックに洗練した造りの店内に、
高級そうなソファーやスツールが余裕たっぷりに備えられ、
夜の気品を携えた照明が淑やかに降り注いでいる。
鈍い光沢のあるカウンターの向こうでグラスを磨いたり
シェイカーを振っているバーデンダーも、
臨時雇いの者ではなく熟練の技巧をその腕につけた本職らしかった。
その背後に無数の酒瓶が一見無造作ながらも機能的に並び
静かに今宵の来訪者を待っている。
「……」
隣の大人の色香に彩られた美女はまだしも、
明らかに学生服姿の自分には不相応である店の雰囲気に、
花京院 典明はその表情に微かに強張らせる。
しかし己の細い左腕をがっきりと拘束 (傍目にはただ組んでいるだけに見えるが)
されているので後退するコトは叶わず、
そのまま美女に促され店内のカウンター席に腰を下ろすコトになった。
落ち着かない心持ちのまま店内を視線の動きだけで見回す花京院を後目に、
美女は慣
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