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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
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間もなく、神器 “グリモア” の口が開き
そこから群青の炎が狭霧のようにフッと吹き出し、彼の中性的な美貌を取り巻く。
 次の瞬間。
(!!)
 花京院の脳裡に遍く無数の光景が、閃光のようにフラッシュ・バックした。
 砕けて黒焦げになった石塀、見るも無惨に焼け落ちた幾つもの(はり)
視界の全てを覆い尽くすほどの勢いで立ち込める黒煙の乱流の中、
煤と血に塗れた異常に白い手が見えた。
 場面は変わって、どこかの草原の中。
 その目と鼻の先には、先刻の惨劇の渦中に在ったと想われる石造りの建物が
原型を留めず灰燼と化している。
 破滅の旋風が吹き抜ける中、眼前に在るモノが何の脈絡もなく
狂暴な金属音と共に降り立った。
 ソレは、覆い被さるように手足を大きく広げ、轟々と銀色の炎を全身から噴き上げる、
赤錆た西洋の甲冑。しかし先日目にした騎士のスタンド、
銀 の 戦 車(シルバー・チャリオッツ)』 のような荘重とした雰囲気は微塵も無く、
ただただ禍々しさと(おぞ)ましさだけがその存在から迸っていた。
 やがて、がらんどうの鎧の中から、ザワザワと多足類のような
夥しい数の蟲が這い擦り出し、内側から噴き上がった淀んだ銀色の炎により
バガンッと開いた兜のまびさしの中から、優に百を超える眼がこちらを見据えていた。
 嘲笑うように、蔑むように、苛むように、?(せせ)らうように、卑しむように!
 同時に響き渡る、この世のモノとは想えない、地獄の蓋が開いたかのような女の絶叫。
 その光景を、丘の上から見下ろす影。
 眼の冷めるような闇蒼の月を背景に、鍛え絞られた剥き出しの痩躯を
ヴァイオレントなレザーで覆い、刃のような群青の髪と瞳を携えた、
美しき餓狼を想わせる一人の男。
 その視線の先には。
 先、には。
 白いワンピースのような服を鮮血と焼塵で汚し、血涙と共に泣き叫ぶ一人の女性と、
その彼女の胸の中、静かに瞳を閉じる栗色の髪の少女が在った。
(!!)
 心象に映る幻影に、花京院は想わず手を伸ばそうとする。
 その理由は解らない。意識すらも追いつかない。
 だが、次の刹那。
「!?」
 唐突に途切れる、追憶の断片(カケラ)
 同時に戻ってくる、現実の風景。
 否、先刻の光景も、かつてこの世界のどこかで、確かに在った現実なのだ。
 髪形もその色も違うが、間違えようがない。
 深い、菫色の瞳。 
 あの、地獄のような光景の中で、ただ一人絶望の叫びをあげていたのは、
紛れもなく……
「今の……ヤツ、は……!」 
 驚愕、困惑、畏怖、何れの感情も強く渦巻いていたが、
静かにしかし何よりも熱く、翡翠色の焔のように
花京院の裡で燃え盛っていたのは 『怒り』 であった。
 激しい苦悶に身と
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