十四話:海水浴2
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まない、これも皆のためだ」
男の手により振り上げられる身の丈を超える大剣。
だが、真に恐ろしいのは担い手だ。
隠された瞳の裏に悲しみの色はあれど迷いはなし。
佇まいには油断はなく、隙など存在しない。
ただ斬るために、戦うためにこの身は存在する。
男は無言。されど、醸し出す空気は雄弁である。
どれだけの修練に身を置けばこのような空気を纏えるのか、想像することすらできない。
それ故に彼は恐怖も怒りもなく驚くほど自然に理解するのだった。
この一太刀は―――死、そのものだと。
「―――幻想大剣・西瓜失墜」
振り下ろす大剣。
―――一閃。分かるのはそれだけであった。
斬られた感触など無い。故に彼が自身の終わりを悟ったのは数秒後。
己の半身が重力に従い―――別れていくのを見届けた時であった。
寒気が走るほどの切れ味ゆえに赤い飛沫すら上がらず、音すら立たない。
まるで元からそうであったように真っ二つのまま崩れ落ちながら彼は呟く。
『スイカ割りに……呪いあれ…ッ』
「おかしなナレーションを付けるな。スイカが食べづらくなる」
『夏になる度に撲殺されるスイカの気持ちが知りたくて、つい』
ふざけてナレーションをつけていたぐだ男の頭を叩くエドモン。
現在、一行は楽しくスイカ割りを行っている最中だ。
まずはアストルフォ、ジャンヌが挑戦したが失敗。
続いたジークフリートが惚れ惚れする様な腕前で見事に成功させたのだ。
「……すまない、俺達のために犠牲にしてしまって本当にすまない」
『ごめん、ジークフリート。そこまで心にくるとは思ってなかった。調子に乗ってごめんなさい』
「いや、正義とはなんなのか……もう一度見つめなおす為には通らねばならない道だった」
「スイカ割り程度で大げさだなぁ。そんなことより早く食べようよ! ボク、ちょうどお腹減ってたんだ!」
ぐだ男のナレーションのせいで自身の正義について考え込むジークフリート。
一気に暗くなりそうな場であったがそこは空気を読まないアストルフォが粉砕していく。
悩むことより食べることの方がアストルフォにとっては重要であるのだ。
「しかし……」
「私は供養のためにも美味しくいただくべきだと思うわ。さ、みんなで食べましょう」
まだへこむジークフリートだったが、マリーの純粋な言葉に立ち直る。
ぐだ男はそんな彼への謝罪の意味を込めて少し大きめに切り分けて渡す。
「でも、本当に甘くて美味しいスイカね。そう言えば何かをかけたらもっと甘くなると聞いたことが……」
『ハーウェイカレー……いや、塩だよ、マリー
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