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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十六話 シミュレーションと実戦
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左翼が前進を止めた。戦いながら艦列を整えようとしている。司令長官の猛烈な攻撃がついにミュラー艦隊の前進を止めた。おそらくミュラー提督は守勢を取って司令長官の攻撃を凌ごうというのだろう。

司令長官はさらに本隊と左翼に攻撃をかけさせる。遮二無二中央を突破しようというのだろう。司令長官が攻め、ミュラー提督が防ぐ。激しい戦いが続く。だがいつまで続くだろう、こちらの損害もかなりのものだ。攻撃が続かなくなれば反撃が来る。そう思ったとき戦局が動いた。左翼が動いたのだ。

「おい、あれは!」
「誰の艦隊だ?」
「トゥルナイゼン少将だ。いつの間に」
会議室が騒然となった。誰もが声をあげ、身を乗り出してスクリーンを見ている。

トゥルナイゼン少将の艦隊がクナップシュタイン、グリルパルツァー少将の艦隊のさらに外側から敵の後背に回ろうとしている。ありえない! 彼の艦隊は本隊と左翼のつなぎ目にあったはずだ。

そこが無くなれば敵がそこを突いてくる。味方は分断され……、分断されない……。いつの間にか本隊とのつなぎ目はグリルパルツァー少将の艦隊が行なっている。

いや、それだけじゃない。クナップシュタイン、グリルパルツァー少将の艦隊が攻撃を変えた。これまでの後背への迂回行動から敵の側面の突破へ変更している。

ミュラー艦隊は混乱している。右翼部隊はクナップシュタイン、グリルパルツァー少将の艦隊の動きに対応するのが精一杯でトゥルナイゼン少将の艦隊の動きを防げずにいる。

本隊と左翼は正面からの司令長官の攻撃を防ぐので精一杯だ。艦隊を再編しながら正面の攻撃を防ごうとした事が裏目に出た。

ようやく分かった。最初からこれが狙いだったのだ。本隊と右翼に苛烈な攻撃をさせる。いやでもミュラー提督は左翼は陽動だと思っただろう。注意は本隊と右翼に集中したはずだ。自分もいつの間にか左翼から目を離していた。司令長官はその間に左翼を再編したのだ。

そしてミュラー提督がこちらの攻撃に耐え切れず艦隊を再編して守勢を取ろうとする時、その時を待った。トゥルナイゼン少将が動きクナップシュタイン、グリルパルツァー少将が攻撃を変えたとき、ミュラー艦隊の右翼は対応し切れなかった。

対応するには本隊からの増援が必要だった。しかし本隊は前面の敵からの攻撃、さらに艦列の再編中だったため適切に動けなかった。もう誰もトゥルナイゼン少将を止める事は出来ない。

トゥルナイゼン少将が敵の後背に出た。それと同時にクナップシュタイン、グリルパルツァー少将が敵を突破する。ミュラー艦隊の右翼は崩れ、勝敗は決した。クレメンツ提督がシミュレーションの終了を宣言した。



「やれやれ、最悪でも引き分けには持ち込めると思っていたんだが、また負けたか」
「悪いね、ナイトハルト。でも相変わら
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