暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十六話 シミュレーションと実戦
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、ミュラー提督の顔を見たが平静を保っている。ワーレン、ルッツ提督も同じだ、と言うことはシミュレーションはそれほど悪くなかったのだろうか。

「閣下、小官はどうすれば良かったのでしょうか?」
「どうすればと言われても……」
「どうでしょう。実際に司令長官がシミュレーションで試してみては」
ミュラー提督が司令長官に提案した。会議室の中でざわめきが起こる。司令長官は少し考えていたが、溜息を吐くと頷いた。

司令長官は俺の問いに実際にシミュレーションで答えてくれる。司令長官とミュラー提督の戦術シミュレーション、それを見られるだけでも今日のシミュレーションはやった甲斐があるというものだ。

会議室に設置されてあるシミュレーションルームに司令長官とミュラー提督が向かった。シミュレーションは途中から再現される。V字陣形が取れず、やむを得ず敵の後背に左翼を回そうとした時点からだ。皆食い入るようにスクリーンを見ている。自分も同様だ。

シミュレーションが始まった。陣形はV字陣形が取れず、左翼が敵の側面を本隊と右翼は後退している。どうするのだろうと見ていると司令長官も自分と同様に左翼を敵の後背に回そうとしている。

ミュラー提督がこちらの左翼の先頭を止めた。これも同じだ、いや、同じじゃない! これまで後退を続けていた本隊と右翼が攻勢をかけている。俺は敵の後背に左翼を回すには、敵の本隊と左翼は引きずり込んだほうが良いと判断し後退したが、司令長官は反撃している。

牽制? それとも陽動だろうか。あるいは味方の左翼と連携が途切れるのを嫌ったのか。どちらにしろ主攻は左翼だ、本隊と右翼は助攻に過ぎない。司令長官は左翼をどう動かすのか。俺の視線は左翼に集中した。

左翼に動きは無い。先頭を抑えられ後背に回り込めずにいる。そして本隊と右翼の攻撃が激しく、いやむしろ手荒くなった。勢いに乗って攻めてくるミュラー艦隊を止めるのではない。叩きのめして中央を突破しようとするかのように激しく攻撃する。

損害もかなり出ている。だがその損害を無視して司令長官は本隊と右翼に攻撃を続けさせる。ビッテンフェルト提督も鼻白むほどの猛攻だ。会議室がざわめき緊張が走る。

「左翼は陽動だな。司令長官の狙いは正面だろう」
「うむ。ミュラー提督の裏をかこうとしているようだ」
「いや、これは陽動ではないのか」
彼方此方でそんな声が聞こえる。

なるほど。左翼は全く動いていない。俺のシミュレーションと同じだ。こちらに注意を引き寄せておいて本隊と右翼で勝負をかけるか。道理で損害を無視して攻撃をかけるはずだ。

だが何処までその攻撃が持つだろう。損害は決して小さくは無い。ミュラー提督もそれは分かっているはずだ。攻撃が限界に達すれば当然反撃がくる。

ミュラー艦隊の本隊と
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ