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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#15
DARK BLUE MOONZ 〜Heaven's Door〜
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 継いで躰はまるでミエナイ引力に惹かれるが如く、眼前の存在へと降りていく。
 抵抗出来ない、拒否する気も微塵もない。今在る感情のスベテを、
ただ在るがままに受け止めたかった。
 その結果どうなろうと、もうどうでも良かった。
 星形の痣が刻まれた細い首筋に、そっと絡められる少女の腕。
 素肌に感じる、小さな吐息。
「……ッ!」
 嫌ではないが、若干困ったような表情で少女の抱擁を受け止める承太郎。
(どうしてオメーはこう、いっつも “いきなり” なんだ……)
 己を包み込む、火の匂いと種々の花々が入り交じった芳香。
 頭の中が気怠く痺れ、心の表面をそっと撫ぜるような甘い感覚に、
何故か気が遠くなりかける。
(なんかした方が、良いのか?)
 蒼く染まる天を仰ぎ、誰に言うでもなく心中で呟いたその言葉に、
無論応える者は誰もいない。
 なので仕方なしに、己に覆い被さる少女の頭に右手を向け、
しかし想い直してその小さな肩にそっと置く。
「もっと……強く……」
 その瞬間、待ち焦がれていたかのように、
少女の消え去るように澄んだ声がピアスで彩られた耳元に届いた。
 戦いで傷ついた躰にそれ以上力を込めるのは気が引けたが、
彼女がそう望むのなら、仕方無しに承太郎は背を抱えた右手に力を込める。
 少女の肩口に刻まれた炎架の紋章と、
青年の襟元から下がった黄金の長鎖が互いに折り重なった。
「もっと……もっと強く……!」
(おいおい、もう随分力入れてるぜ。アラストール潰れンぞ)
 少女の可憐な、更なる要請に無頼の貴公子は自棄(ヤケ)になったように応じる。
「ッ!」
 開いた制服の、極薄のインナー越しに、破れたセーラー服から露出した
少女の素肌が感じられた。
 そしてその傍に刻まれた、戦いの疵痕も。
「……」
 自分と同じ、傷を持つ者。
 少女への謝罪代わりにコトへ応じていると想っていた自分だったが、
どうもそうではないらしい。
 よく解らないが、おそらくソレとは違う、もっと別のナニカだ。
 それは一体何だと考えようとして、承太郎は止めた。
 胸元から伝わってくる、少女の鼓動、そして体温。
 散々なメに在ったようだが、この少女は生きている。
 今はただ、その無事を喜んでやるのが、何よりも大事なコトに想えた。
 やがて、少女の躰が惜しむようにそっと離れ、真紅の双眸が真っ直ぐ己を見つめる。
「ッ!」
 その表情の変化を、承太郎は見逃さなかった。
(コイツ、 『こんな顔』 だったか?)
 外貌が美しいとかそういう次元ではなく、
まるで心の中の不純物がスベテ流れ去ったかのような、澄み切った表情。
 初めて視る筈なのに、以前から知っていたような既視感。
 ソレが己の 『分身』 を視るような感覚だった
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