第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#15
DARK BLUE MOONZ 〜Heaven's Door〜
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ト言わないでよ!! 大体こんな躯で一体どこ行く気よ!!
だったら私と一緒にいてよッッ!!」
論理も道理もそして前後の繋がりもないまま、
少女はただ感情のままに言葉を吐きだし続ける。
ソレに比例して疵痕に落ちる、透明で温かな雫。
(やれやれ…… 『そーゆーコト』 か……)
心中でそう呟き、無頼の貴公子は仰向けに寝っ転がったまま学帽の鍔を抓む。
どうやら、上で己を組み如く少女は、
果てしなく不器用でブッきらぼうながらも
自分のコトを 『気遣って』 くれているようだ。
昨日の気が抜けたような戦い振りも、今朝の不自然な態度も、
スベテは “コレ” が原因だったらしい。
(もしかして、 “オレの所為” か? そうかもな……)
少女を庇って傷を負ったコトに、微塵の後悔もない。間違っていたとも想わない。
しかし、 『そうされた』 彼女の気持ちを、もう少し汲んでやるべき
だったのかもしれない。
気丈で、とことん自分の気持ちに素直じゃないが、
その心の裡はこの世の誰よりも温かく、そして優しい心を持った少女だというコトは、
もうとっくの昔に識っていた筈だから。
(……)
こーゆー時、どんな事を言えば良いのか解らない。
一体どうすれば、目の前で泣く少女の涙を止めてやれるのか?
己に流れる血統も、背後のスタンドも、何も教えてはくれない。
だから承太郎は、自分の一番正直な気持ちを口にする事にした。
何の偽りもない、自分だけの、少女に対する気持ち。
そして定められた運命で在るかの如く、肌と肌が触れる程の近距離で交錯する、
淡いライトグリーンの瞳と深い真紅の灼眼。
ソレと同時に口唇へ刻まれる高潔な微笑と共に、
透き通った表情でシャナへと伝えられる言葉。
「何度も言っただろ? 大したコトねーよ。この程度」
そう言って少女の前に、剥き出しの左腕を翳してみせる。
(そんな……!)
解ってくれないの? と少女がその紅い双眸をより潤ませるより速く、
再び承太郎の口唇が動く。
「“オメーの代わりと想えば、大したこたァねー” 」
「――ッッ!!」
瞬間。
脳裡を、否、己の存在全体を充たす、緩やかで温かな光。
言葉等ではとても表現出来ない、余りにも激しく強烈な感情に、息が、出来ない。
でも、不思議と全然不快じゃない。胸の中が無くなってしまうかのように
狂おしく締め付けられてはいるけど。
その眼前で、自分の一番好きな微笑を浮かべて瞳を見つめている青年。
やっぱり、この人は、ホリィの息子なんだ。
どれだけ悪ぶっていても、この世の誰よりも温かく優しい精神を持っている。
そして、少女が思考出来るのは、ソコまで。
次の瞬間、シャナの意志は、霧散した。
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