第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#14
DARK BLUE MOONY 〜Bake The Dust〜
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当てながらも
無頼の貴公子は目的の場所へ疾走していた。
(……でねぇな。ホテルに忘れたのか?)
だったら別にそれで構わない。
少女が依怙地になって電話に出ないのだとしても一向に構わない。
しかし、もし、『出られないのだとしたら』
(あそこかッッ!!)
焦燥よりも先に認識が走った。
視線の遙か先、高層ビルの隙間に煌めく群青の色彩をスタープラチナが捉えた。
無論周囲を行き交う人々にソレは視えていない。
耳に真新しいメタリック・プラチナのスマホを当てたまま、
空条 承太郎はその場を目指す。
しかしその中心点で、既に同属同士の熾烈な戦いが始まっているコトを彼は知らない。
(――ッッ!!)
スカートのポケットから断続的に発せられる、無機質な電子音。
困惑したまま瞳を上へ下へと動かす少女に対し、
遠間からそれを聴くマージョリーは訝しげにその音の発生源をみる。
「……何か知らないけど、鳴ってるわよ? 出たら?
その間に攻撃するなんてセコい真似はしないから。
これが現世のラストコールになるかもしれないしね」
封絶の中で何故携帯電話が鳴るのか?
疑問には想ったが考慮に値しないと判断した美女に促されるように、
少女は小刻みに震える左手でポケットに手を伸ばす。
その音を待ち望んでいたかのような、全身で拒絶するような、矛盾した表情。
着信音に合わせランプが点灯する紅い携帯電話の、
液晶画面に記載された名前。
「……」
しかし少女は通話ボタンの上で震える指先をそれ以上押す事はなく、
どうしたらいいか解らないまま呆然と立ち尽くした。
やがて静寂した空間に無機質な電子音が20回以上鳴り響いた後、それは途切れる。
沈黙の中、興醒めしたように美女が口を開いた。
「良かったの? 彼氏からの熱烈なラブコールとかだったんじゃない?
それにしても封絶の中までかかってくるなんて変な電話」
「うるさいッッッッ!!!!」
からかうように告げられたマージョリーの言葉だったが、
それに心の深奥を無遠慮に触れられたように感じたシャナは怒声で返した。
戸惑いも逡巡も、躰の痛みもその一声で全て吹き飛んだ。
(おまえが……おまえなんかが……!)
わなわなと震える全身を駆け巡る理解不能の感情と共に、再び両手に炎が宿る。
(私達の間に入ってくるなッッ!!)
そう激高し、少女は手に宿った二つの炎を眼前で鋭く弾き合わせた。
そのたった一度の動作だけで属性の違う炎同士が一瞬で融合し
巨大な深紅の球となる。
戦慄の暗殺者、紅世の王 “狩人” フリアグネとの戦い以降一ヶ月余り、
この少女も何もしていなかったわけではない。
己に課した日々の鍛錬の中、確実にアノ時よりも 「成長
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