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夜空の武偵
Ammo09。目覚めると……
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下を歩いた感じでは20部屋くらいあった。まるで貴族の館だな、なんて思ったが。
それもそのはず。本当に貴族の館だった。何故解ったかというと、大広間に入ると、この屋敷の令嬢であるアリスが部屋に入ってきた俺に気づいて座っていた椅子から立ち上がったからだ。

「@jpmawg#!」

相変わらず何を言ってるのかは解らないが、なんとなく心配されてるのは伝わってくる。
泣いてたのか目には涙の跡も残ってるし。

「#apmtwgjq!」

父さんがルーマニア語でアリスに語りかけ、落ち着かせた。
うーん、やはり外国語の勉強はやった方がいいかもな。
言葉を話せないのはかなり不便だし。
と、勤勉意欲を高めてると。
父さんがアリスの発言を通訳してくれた。

「……うん、うん。わかった。じゃあ、伝えるね。
昴君、アリスちゃんは君にお礼をしたいって言ってるよ。約束した姉を見つけてくれたことを感謝してる、ありがとう。って言ってるよ」

父さんの言葉に俺は表情を曇らせる。
確かに依頼にあった姉は見つかった。
ちゃんと生きて連れて帰ることもできた。
だが……。
だけど、その姉の意識は戻らない。
機械に繋がれ、ただ呼吸を繰り返すだけのものになってしまっていた。
アリスの姉であるアリサは本来なら15歳になる少女なのだが。
その肉体は12歳前後のまま、成長は止まってしまっていた。
発見した時には痩せこけ、機械に繋がれ、ただ血を提供する道具のように扱われていた。
『生きてる』と言ったら生きてるが、あの状態を『生きてる』と言っても良いのか……俺は何も言えない。
ただ、その姿を見た瞬間、何が何でもブラドを殴る! と思っただけだった。
……情けないな。俺は結局何もできなかった。
確かにヒルダやブラドを倒すことはできたが、シャーロックに撃たれて気絶するし。
望んで依頼を受けたわけじゃないが、五体満足で達成できたわけじゃない。
何もかも、中途半端。

「……礼を言われる資格なんかないよ」

俺は結局守れなかったんだから。
そう思うと、情けなくて嫌になる。
逃げ出したくなる。
実際、俺の足は無意識のうちに出入り口の方へ向かっていた。
だが、それを阻むように父さんが立ち塞がる。

「『自分は何もできなかった』。本当にそう思ってるのか?」

父さんが行く手を阻むように、逃げ出そうとする俺を咎めるような顔をして俺を見つめる。

「確かに昴君は……昴は依頼を完璧に達成できたとは言えない。
吸血鬼は倒せたけど、結局逃げられたからね。犠牲になった子供達も何人もいた。
そういった意味では依頼は失敗だ。
だけど……それがなんだい?」

「は?」

「確かに吸血鬼に逃げられ、プロ……シェリングフォード氏にも逃げられたけ
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