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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#13
DARK BLUE MOONX 〜Dead Man's Anthology〜
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ちいち “理由” が必要なのか?」
 そう言って振り向いた彼の瞳。
 その裡に宿った気高き光。
 風貌も気配も何もかも違う存在だったが、同じだった。
 かつてラミーの、 『その前の』 存在であった時、
自分が強く惹かれた人間に。
「……此処より北北西の方角。3qほど行った所だ。
トーチを視るコトのできる君ならば、
近くまでいけば確認出来るだろう」
 まるで引力に強く牽きつけられるが如く、
そう口走っていたラミーの言葉に承太郎は小さく頷く。
 そして。
「じゃあな」
 と短く告げ、制服の長い裾を翻して店を出ていった。
 一度も、こちらを振り返るコトはなく。
 それが意味するものは、決別。
 もう二度と会うコトはない者に対する言葉。
 それにも関わらず彼、は。
「……」
 もっと早く “彼” に出逢えていれば。
 この世界に存在してすぐ、最初に逢った人間が彼だったのならば。
 かつて無垢なままに行ってしまった自分の愚かな行為も、
無かったコトになったのだろうか?
 想っても、仕方のない事。
 幾ら嘆いても、決して戻る事はない時。
 それは充分過ぎるほど解っていても、ラミーは憂いに充ちた瞳で外をみつめる。
 その磨き込まれたガラスの表面に、朧気に映った姿。
 ソレは、気品に充ちた老紳士のそれではなく、
紫の髪を携えた、儚げな印象の少女だった。






【3】

 少女は、香港の街中を駆けていた。
 道行く人々の僅かな隙間を縫いながら、
しかし弾丸のような速度でソレを目指す。
 右の肩口に刻まれた、炎架の紋章を気流にはためかせながら。
 先刻、現れてすぐに消えた封絶。
 その周囲は(もぬけ) の殻で存在の残り香すらなかった。
 何の違和感もない後の状況から察するに、
相当な力量を持つフレイムヘイズか王 (或いはその両方) が
その封絶の主を討滅したというのがアラストールとの共通見解。
(熟練のフレイムヘイズ程、己の存在の気配を制御し絶つ術を身につけている)
 警戒心を弛めるコトなくその辺り一帯を(さら)っていた処
再び途轍もない存在感を持つ者が、ソレを微塵も弛めるコトなく
高速で南東へ移動するのを感知した。
 少女はいま、その存在を追っている。
(……)
 早朝から、ジョセフには何も告げずホテルの外に出た。
 見知らぬ街を歩き、海のさざめきでも眺めていれば
今の鬱屈した気分も多少は晴れるかと想っていた。
 しかし、結果はまるで逆効果。
 穏やかな波音も、響く海鳥の鳴き声も、淡い潮の香りも、
全ては意味無く自分の感情を苛立たせ、ささくれ立たせるだけだった。
(“アノ時” は、こんなじゃなかったのに)
 埠頭の先端で両膝を抱え、
その中に顔
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