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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#13
DARK BLUE MOONX 〜Dead Man's Anthology〜
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と日本語で告げる。
 理解不能の言語で注文された為、指差されたメニュー覗き込む彼女を
承太郎は解ったかい? とその漏れる斜陽で神秘的な色彩を携えた
ライトグリーンの瞳でみつめる。
(!?)
 突如火を噴くように真っ赤になったそのウェイトレスは、
わ、解りました! と広東語でそう告げ足早にその場を去った。
 その所為で目の前に座る老紳士の注文は完全に無視される形となる。
「こんな時間から酒かね? 
それにみたところ、君はまだ未成年のようだが?」
「人間じゃあねぇヤツに、人間の法律で説教垂れられたくねーな」
 咎めるような口調ではないが幾分声音が硬くなった老人に、
承太郎は銜え煙草を噛み締めたままそう返す。
「……フム、まずは名乗っておこうか、青年よ。
私は “屍拾い” ラミー。
君も気づいた通り “紅世の徒” だ」
“屍拾い” とは随分とまた、その見た目に似合わない(あざな) が在るものだと
承太郎は根本まで灰になった煙草をガラスの灰皿でもみ消す。
 そして。
「……承太郎、空条 承太郎だ」
 背後のシートに両腕を組んで身を預けながら、誰に言うでもなくそう告げた。
「フッ、無頼を気取ってはいるが、一応の礼儀は弁えているようだな」
「ケッ」
 軽く毒づいて承太郎は前へと向き直る。
「それより一つ答えな。
さっき手にした人間の光、一体何に使うつもりだ?」
「“コレ” のコトかな?」
 問われた老紳士、紅世の徒ラミーはスーツの内ポケットから
ゆらゆらと儚い色彩を称える光を取りだした。
 当然周囲の人間にソレは視えてはおらず、
逆に視える承太郎はその瞳を微かに鋭くする。
「失礼。人間に対しては無神経な物言いだったな。
安心したまえ。決してこの存在を無為にするようなコトには用いない。
信じられないというのなら、このトーチを君に託すのも、(やぶさ) かではないが」
 そう言ってラミーはその淡い存在の光を自分へと差し出してくる。
「……」
 イヤなジジイだ、と承太郎は想った。
 そんな事をされても責任は持てない。
 まさか今更さっきの男性を探し出して
この光を渡すわけにもいかないだろう。
 故に自分の出来る選択は端から決定されている。
「わァったよ。信じりゃいーんだろ。アンタが悪党じゃあねーって。
第一、本当にオレをヤる気ならこんな回りくどい方法は取らねーだろうしな」
「誤解が解けてなによりだ」
 そう言って目元を笑みの形に曲げる老紳士に
タヌキジジイと承太郎は心中で漏らした。
 コレでは完全に、自分が勘違いで勝手にブチキレていた道化だ。
 その原因は妙にイラついて冷静さを欠いていた所にあるのだが、
さりげなくその部分にまでフォローを入れられたようで面白くない。

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