第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#13
DARK BLUE MOONX 〜Dead Man's Anthology〜
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悲痛な響きを持って自分に告げられる少女の声。
以前の自分ならば、そのフレイムヘイズにあるまじき気構えを
厳格に諫めていたのかもしれない。
「……」
しかし、言えない。
もう、“今の自分には” 何も言えない。
少女自身も気づいていない心中の 『真実』 に、
気がついてしまったから。
アノ時の、自分も “彼女” もきっと、
今のこの子と同じだったのだから。
「……よい。行こう。大した遣い手でもなさそうだが油断はするな。
老獪な者はソレを逆手に取る」
「……うん」
儚いながらもその裡に強い芯を残して、少女は頷く。
そして無意識に手を入れていたスカートのポケット。
指先に触れる、滑らかな流線形のボディー。
“人喰いのバケモンが現れたらすぐに報せろ”
脳裡に甦る、彼の声。
しかし少女は、その言葉を握りつぶすように
ポケットの中の真新しい携 帯 電 話に力を込めた。
その理由は、少女自身も定かではない。
出立前にジョセフの言った事も忘れ、今起こったコトを誰にも告げず
埠頭に背を向ける少女。
そして、時は、元に戻る。
ホテルを飛び出し共に目的の場所へと疾走する花京院とマージョリー。
互いに互いをフォロー出来る間合いを保ったまま、
周囲の人間をものともせず縦横無尽に夕闇に染まった街中を翔る。
鮮やかな栗色の髪が舞い踊る気流の中、美女が徐に口を開いた。
「……また邪魔者が一匹、こっちに向かってきてるわね……」
「そうなんですか!?」
隣を走る中性系の美男子が彼女の横顔に問う。
「えぇ、このままいくと、目的の場所で丁度カチ合うわ。
そうなると少し面倒かも」
「戦い、ますか?」
瞬時に決意を固め、花京院は己の肩から翡翠色の
『幽 波 紋 光』 を滲ませる。
その彼に対し、
「ノリアキ! 二手に分かれるわよッ!
私は後ろのバカを始末してからいくから、
アンタは先に行ってラミーのクソ野郎を見張ってて!!」
長年の経験に裏打ちされた瞬時の判断力で、美女はそう指示する。
「いい? 絶対に私がいくまで手を出しちゃダメよ。
ヤツは逃げる力なら他の誰よりも長けてるし、
それにどんな奥の手を隠し持ってるか解らない正体不明のヤツだから」
マージョリーの言葉に、同じ速度で脇を走る美男子は一度無言で頷く。
そして。
「解りました。気をつけて、ミス・マージョリー」
決意に研ぎ澄まされた視線を逸らさぬまま、静かにそう告げた。
「……ッ!」
たったそれだけの言葉だったが、美女は何故か自分の頬が紅潮するのを覚える。
戦い前の猛り狂う熱ではない、ソレとは全く異質の、奇妙な高揚
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