第ニ十一話。変わる日常
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それだけ想われていたんだな、一文字は。
いつもクールで落ち着いている理亜。
そんな彼女の素顔に俺は困惑してしまう。
いや、違うな。
本当は解っていたんだ。
理亜がどうしてこんなに感情的になっているのか。
理亜がどうして『主人公』なんて苦しい道を選んだのか。
理亜がどうして……俺に『自分の物語になれ』なんて言ったのか。
本当は____解っているんだ。
「理亜。ありがとうな」
その気持ちがとても嬉しいから。だから俺は理亜をさらに強く抱締める。
「んぅ……はふぅ……」
苦しそうな声を漏らしながら理亜は、それでもせがむように俺の体を強く抱き締めてきた。
「もっと……苦しくなるくらい……お願いします。……兄さんを全身で感じられるくらい、強く、強く抱き締めて欲しいんです……」
俺はさらに理亜の体を強く抱き締めた。
苦しそうに告げる言葉に応じるように。泣くほど辛く、苦しい想いを抱えながらそれでも俺の為に戦って、俺のことを想ってくれるその体を離さないように。
強く、力強く抱き締める。
「……ん……兄さん…………」
抱き締められた理亜は消え入るような声を出して。俺の耳元で囁いた。
「好きです、兄さん」
その言葉を聞いた途端、俺の心臓は停止してしまうんじゃないかと思うほど大きく跳ねた。
身体に中心、中央に向かって血流が集まっていく。
ああ、敵わないな。
天下無敵のヒステリアモードでも、敵わないものがある。
昔、父さんに言われた言葉を思い出す。
『いいか、キンジ』
すぐそこにいるかのように。
父さんの声が、聞こえる。
ような、気がする。
『キンジ』
殉職した俺の前世の父親。
遠山金叉の声が。
走馬灯のように、ゆっくりとリピートされる。
『HSSは最強じゃない。最弱なんだ。世界の半分の人間は俺達HSSを____んだからな』
世界の半分の人間?
それは、誰だ?
『それは____だ。____の為なら俺達HSSは命を投げ打ってしまうのだから』
じゃあ、そうならないようにするためにはどうしたらいいんだ……?
『自分を____を、____のさ』
どうやって?
『____してあげなさい。それができれば、HSSは最弱から最強になれる』
父さんのその言葉を思い出した俺は瞳をぎゅっと閉じて、理亜の背中を抱き寄せる。
「『私の物語になりなさい』が、ロアに対するプロポーズだって、私も知っていました。兄さんも知っていたんですよね?」
「ああ、知ってた。知ってたから……悩んだ。動揺もしまくった。だけど……本当は嬉しかったんだ」
「あ……ふふっ。私だって、さっき言って貰った『俺の物
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