第ニ十一話。変わる日常
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「ああ。理亜のお願いは何でも聞いてあげたいが、それだけはダメだ! 理亜だけを戦わせて、俺はぬくぬくと普通の生活を送るなんて……できないからな」
「……兄さんと同じ覚悟を私がして。私の物語として兄さんも一緒に戦っていただくというのはいかがですか?」
「可愛い理亜のお願いは極力聞いてあげたいが、それもダメだ! 理亜は____きっと、俺がピンチになってしまったら俺が戦えないようにしてしまいそうだし。それに……俺は理亜の兄だからな。大切な妹を守るなら、妹の物語になるんじゃなくて、妹の物語を記す物語として語っていく方になりたいんだよ。俺はな」
断りを入れると、理亜は目を伏せる。前髪で目が見えなくなるが、肩を大きく震わせたのはわかった。
「兄さん……私はやっぱり、兄さんに死んで欲しくありません」
「ああ、俺も死にたくない。こんな可愛い妹を残して死んでやるものか!
安心してくれ、理亜! 俺は死なない。
例え死ぬような場面でも、俺は死なない。もし死んでも、俺は地獄の底から這い上がってくるよ。なんたって俺は__不可能を可能にする男だからね!
それに理亜も見ただろう? 俺には頼りになる仲間がたくさんいるんだよ」
理亜の震える肩にそっと手を伸ばす。
理亜も体は自然とした動きで俺の手を避け……そうになるも、理亜はそのまま我慢するかのように踏み止まった。だから、俺はしっかりと両手で、理亜の肩を掴んでやることができた。
「我慢してくれてありがとうな、おかげで震える理亜の肩を掴めたよ」
「……兄さんだから、ですよ?」
理亜は揺れた声で呟くと、そのまま俺の胸に抱きついてきた?
「兄さんだから。兄さんだから私は、死んで欲しくないんです。兄さんだから、触られるのも我慢出来るんです。兄さんだから……もっと触って欲しいんです」
「理亜……?」
ぎゅううう、と俺の背中に手を回し強く強く抱き締めてきた。
回された手の強さから、理亜の気持ちの強さみたいなものが伝わってきて……少しだけ戸惑いを感じてしまう。
「兄さんだから……抱きつきたいし……」
両手を背中に回したまま、理亜は潤んだ瞳で見上げてきた。
「兄さんだから……抱き締めて欲しいんです……」
その弱々しい、華奢な体を俺は壊れないようにそっと包み込む。
「うっ……ひくっ……っ」
理亜の瞳から、大粒の涙が溢れ出し、頬を伝わって溢れ落ちていく。
「理亜……」
「もっと、もっと強く、抱き締めてくれませんか兄さん……?」
切なさが込められたその言葉に、俺の心臓は高鳴りっぱなしだった。
理亜がこんな感情を出す姿を見たのは初めてだ。
今までの記憶の中にも、理亜がこんなに自分の感情を、想いをさらけ出すところはない。
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