第6部 贖罪の炎宝石
第1章 帰省
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残念であった。
さて、男性教諭出征したために、授業は半減であった。
暇を持て余した女子生徒たちは、寂しげにかたまり、恋人や友人たちが無事でやっているのか噂しあっている。
ベンチに座って物憂けに肘をついていたモンモランシーの姿を見つけ、キュルケは近づいた。
「あらら、恋人がいなくなって退屈なようね」
モンモランシーはまっすぐ前を見たまま、人事のように呟いた。
「いなくなってせいせいするわ。やきもちしなくていいもの」
「でも、寂しそうじゃない?」
「あのお調子者ってば、臆病なくせに無理しちゃってさ。はーあ、あんなのでもいないとちょっとは寂しいものね」
キュルケはモンモランシーの肩を叩いた。
「ま、始祖ブリミルの降臨祭までには帰ってくるわよ。親愛なるあなたのお国の女王陛下や偉大なる我が国の皇帝陛下は、簡単な勝ち戦だって言ってたじゃない」
『親愛』と『偉大』に皮肉な調子を籠めて、キュルケが呟く。
もとよりゲルマニア貴族は、忠誠心に薄い。
所詮は諸侯が利害で寄り集まってできた国だからだ。
「だといいんだけどね」
モンモランシーはそしてため息。
なんだかそんなモンモランシーを見ていると、キュルケまで切ない気分になってきてしまう。
嫌ねぇ、戦争って本当にいやぁねぇ、といっつも自分が繰り広げている暴れっぷりを棚に上げて、呟いた。
キュルケとタバサはぶらぶらと歩き、火の塔の隣にあるコルベールの研究室前までやってきた。
そこではコルベールが、一生懸命にゼロ戦に取り付いて整備を行っている。
男の教諭はほとんど出征したというのに……、このコルベールと来たらマイペースもいいところである。
戦争などどこ吹く風といった具合に、研究に没頭しているようであった。
「お忙しそうですわね」
キュルケは、そんなコルベールに嫌みの混じった声で言った。
「ん?」とコルベールは顔を上げ、にっこりと笑った。
「おお、ミス・ツエルプストー。実はウルキオラくんにゼロ戦の燃費を向上させてほしいといわれていてね」
「そうですの」
キュルケは不快感を顔に浮かべ、相槌を打った。
「どうしたのかね?ミス……」
「ミスタ。あなたは王軍に志願なさいませんでしたの?」
学院の男たちのほとんどは、戦に赴くというのに……。
「ん?ああ……、戦は嫌いでね」
コルベールはキュルケから顔を背けた。
キュルケは軽蔑の色を顔に浮かべて、鼻を鳴らす。
男らしくない、と思う。
目の前の戦方逃げ出しているようにしか見えない。
どの系統より戦に向く『火』の使い手でありながら、『炎蛇』の二つ名を持ちながら、この教師は戦が嫌い
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