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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十四話 居場所
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は装甲擲弾兵総監でもあるから命令自体は可笑しな物ではない。

しかし向こうは俺を嫌っているはずだ。俺が宇宙艦隊に居るのも良い厄介払いが出来たぐらいにしか思っていないだろう。俺の顔など見たくないだろうにわざわざ呼びつけるとはどういうことか?

まさかとは思うがヴァレンシュタイン司令長官との間を取り持てというのだろうか。どうにもよく分からん。

「ヘルマン・フォン・リューネブルク中将です」
総監室に入ると執務机からオフレッサーがこちらに眼を向けた。相変わらず人相が悪い。せめて左頬の傷を完治させれば少しは印象が変わるのだが、わざと完治させないのだからな。

オフレッサーは席を立つと俺の方に歩いてきた。
「リューネブルク中将か、よく来た。少し付き合え」
そう唸るような声で言い捨てると俺の返事を聞くことも無く総監室を出て行った。俺はこの男の声も好きになれない。

オフレッサーは部屋だけではなく装甲擲弾兵総監部からも出るとこちらを気にする事もなく歩き始めた。やむなく俺も後を追う。
「三十分ほど歩く。いい腹ごなしになるだろう」

三十分? 腹ごなし? 昼飯を一緒に取ろうというのか? そう思ったが
「はっ」
と俺は答えていた。

三十分ほどオフレッサーに付いて歩くと小さな街並みが見えてきた。その中にある一軒のレストラン、いや定食屋といって良い店にオフレッサーは入った。どう見ても帝国軍上級大将が入る店ではない。しかし止むを得ず俺も中に入った。

店に入るとオフレッサーと差し向かいで席に座ることになった。
「俺が注文する。親父、何時ものヤツを二つ頼む」
おいおい、一体何処まで勝手な奴なんだ。それにしても何時ものヤツ? この男、此処にはよく来るのか?

「どうした、驚いたか。どうみても帝国軍上級大将の来る店ではないからな……」
「まあ、多少は驚いております」
「フン、遠慮のないやつだ」

妙な感じだ。オフレッサーは俺の答えにも余り気分を害した風でもない。一体何を考えているのだろう? ただ飯を一緒に取ろうというのだろうか? 有り得ない話ではないが、相手がオフレッサーだ、只の馬鹿とは思わないが、聡明とも思えない。何を考えている?

無愛想な六十年配の親父が出してきた料理はアイスバインを使ったシュラハトプラットだった。塩漬けした骨付きの豚スネ肉を柔らかくなるまで煮込んだアイスバイン、それをザワークラウトの上に載せ蒸し焼きにした料理だ。それに白ワインが一本付いている。一口食べて唸り声が出た。これは美味い、これほど美味いシュラハトプラットを俺は食べた事がない。

アイスバインの煮込み具合によって美味しさに雲泥の差が出る料理だがこの店のアイスバイン、これは間違いなく絶品といって良いだろう。それにザワークラウトもいける。

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