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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十一話 面従腹背
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も気付いていて黙っているのだろうか。思わず戦慄が走った。
「ようやく分かったか、キルヒアイス准将。ローエングラム伯は危険な状況に有ると」
冷静な声だった。私の迂闊さを笑うことも自分の有能さを誇る色も無い。目の前のオーベルシュタイン准将は気負うことなく立っている。
「宇宙艦隊の昨今の関心事は司令長官が何時、ローエングラム伯への遠慮を止めるか、いやそれに我慢できなくなるかだ」
「……その場合、どうなります?」
「実権の無い閑職に回されるか、或いは粛清されるか」
「!」
「今のところは大丈夫だろう。門閥貴族との戦いを前にローエングラム伯を排除するとは思えない。しかし、その後は分からない。宇宙艦隊はローエングラム伯の代わりを務める人物に不自由していない」
「……メルカッツ上級大将ですか」
メルカッツ上級大将を宇宙艦隊に招いたのはヴァレンシュタイン司令長官だった。それも当初は副司令長官にと考えていた。
「メルカッツ提督だけではない。他にもケスラー、メックリンガー、クレメンツ等、能力だけではなく忠誠心でも信頼できる司令官が居るのだ。遠慮しなければならない副司令長官など無用だろう」
確かにそうだ。ラインハルト様が司令長官だった時、何かとヴァレンシュタイン司令長官に不満を感じた。もちろん能力面に関してではない。周囲がラインハルト様よりもヴァレンシュタイン副司令長官に心服していることが目障りだった。
ラインハルト様も同じ思いだった。ラインハルト様の威権が確立されればヴァレンシュタイン副司令長官は排除されたに違いない。ならば何時、ラインハルト様が排除されても可笑しくないといって良いだろう。
「キルヒアイス准将、卿はヴァレンシュタイン司令長官の好意を受けるべきだ」
「好意ですか……」
「そうだ、好意だ。卿に新しい経験をさせ、その力量を発揮させようとしているのだ。好意以外の何物でもない」
「……」
「断る事は許されない。断れば周りは皆、卿を司令長官の好意を無にする身の程知らず、ローエングラム伯の事を卿のわがままを許す愚か者と思うだろう。違うかな?」
「……ある意味人質ですね」
オーベルシュタイン准将が微かに頷き淡々と言葉を紡ぐ。
「そういう面も有るだろう。卿が司令長官の下に有れば、ローエングラム伯も司令長官に気を使わざるを得ない」
「……」
「だが常に司令長官の傍にいると言う事は、司令長官の考えを知ることが出来るという事でもある。今、ローエングラム伯にとって大事なのは司令長官が何を考えているかを的確に知ること、そうではないかな?」
私にスパイの真似事をしろというのか……。しかし、それがラインハルト様のためになるのであれば、躊躇う事は許されない。
「……分かりました。司令長官の好意を受
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