百六 人形劇の黒幕
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、術者が現在何処を走っているのか追跡者に露見しているようなものだ。要は、手掛かりを残して自分の居所を白状しているのと同義である。
次から次へと死角から飛んでくる千本を避けながら、クスナは冷笑した。曲がり角の鏡をちらりと見遣って、標的の姿を確認する。右方向へ駆けたその姿を追ってすぐ、クスナは目的の対象物を見つけた。
紫苑を背中に乗せて、慎重に、だが素早く移動する。肩越しに背後を窺いつつ、木の枝から枝へ飛び移っていた白の背中がクスナの瞳に飛び込んだ。
己を追跡する者の影が見当たらない事にほっと肩を落とした彼の傍らに、音も無く近づく。クスナの体内に潜む蟲が急かすように蠢いた。
「【麻酔――施術】!」
クスナの声に従って、彼の髪から伸びた何かが白の首筋に噛みつく。ちくり、とした痛みに嫌な予感がして、白はクスナから距離を取ろうと速度を速めた。
しかしながら寸前より遥かに遅い相手の足取りに、ふっとクスナは鼻を鳴らす。しゅるしゅると己の髪の中へ消えてゆく蟲を尻目に、彼は悠々と白の後を追った。
手近な大木の枝上でなんとか身体を支えた白は、背負っていた紫苑を幹にそっと寄りかからせる。その額からは多量の脂汗が滴っていた。
「わざわざ仕掛けたトラップも無駄に終わったな」
蟲の毒に侵され、身動き出来ぬだろう彼の背後に、クスナは降り立った。白の後ろから忍び寄るクスナからは、【チャクラ蟲】の不気味な影がゆらゆらと伸びている。
「見え透いた罠だ。所詮はガキというわけか…」
白が仕掛けたトラップの数々たる鏡を馬鹿にして、クスナは標的に近づいた。彼の冷ややかな視線の先には、蟲によって麻痺した白と恐怖に怯える紫苑の姿がある。
ゆったりとした仕草で、クスナは着衣の胸元を広げた。その内側から取り出した手術刀が、森中に射し込む陽光で、ギラリと輝く。
「【暗黒医術…?――」
鈍く光る手術刀を振り翳す。勝利を確信したクスナの耳元で、子ども特有の高い声が響き渡った。
「その子供騙しに見事引っ掛かってくれて感謝するよ」
瞬間、立ち込めた白煙の向こう。
愕然と立ち竦むクスナの瞳に、もう会いたくは無かった人間の姿が飛び込んでくる。
あっさり正体を露わにした存在は、クスナが手にしていた手術刀を一笑に付した。
「同じ手に二度も騙されるとは聊かお粗末じゃないかな?」
館襲撃の際、紫苑と足穂に変化して対峙した初会。それを今一度再現してみせた当の本人は、四人衆のリーダー格であるクスナの顔を覗き込んだ。
高い木々が聳える森林。天を覆い尽す葉の合間から覗く斜陽が、ナルトの金の髪に降り注ぐ。青い顔をするクスナの頭上に、小さな、それでいて存在感のある影が落ちた。
「少し、お話しようか」
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