百六 人形劇の黒幕
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じられている沼の国の祠。
其処へと繋がる森の中では、鋭い風切り音が幾度も鳴り渡っていた。
紫苑を背負った白の姿はとうに消えている。彼らを逃がしたナルトの背中に、五つの手裏剣が風を切って押し寄せた。
串刺しにせんと殺到してきたそれらを難なく避けたナルトを見て、セツナはひゅうっと口笛を吹く。
「大したものだ。だが、これはどうかな?」
指をくんっと動かす。鍵盤を滑らかに撫でるかのようなセツナの指先の仕草に合わせて、手裏剣が今度は五方向から飛来する。後ろ向きで木から木へ飛び移りながら迎撃していたナルトの背に巨木の幹が当たった。
ナルトの身体がバラバラに刻まれるのを予想して、セツナが勝利の笑みを浮かべる。だが直後、セツナは笑みを浮かべたまま凍り付いた。
「…見え透いた技だね」
突如、四つの手裏剣が力無く地へ堕ちる。セツナは自分の指先と手裏剣を繋いでいたチャクラ糸を見た。
それらは尽く断ち切られていた。
傀儡の術の応用で、細いチャクラ糸を指と手裏剣に結び付ける。その上で風遁を用い、手裏剣を自在に操っていたのだ。それが瞬時に見破られた事実に、セツナは衝撃を受けた。
苦々しい顔でナルトを睨んだセツナは顔を強張らせる。彼の瞳に飛び込んできたのは、自身のチャクラ糸と似た、細い糸。ナルトの指先で踊る、蜘蛛の糸の如く細い――鋼糸。
刀の一種であるソレは武器の中で最も扱いが難しい。両手の指に巻きつかせ、微かな指の動きで相手を切り裂ける。だが鋭過ぎて自らの指を切り落とし兼ねない諸刃の剣でもある。あまりに鋭利なその鋼糸に一度でも絡まれると、並みの者ならばあっという間に切り刻まれている。
チャクラ糸より扱いが難しい鋼糸を難なく操り、且つ自分に気づかれる事なく一瞬でチャクラ糸を切ったナルトに、セツナは戦慄を覚えた。
ハッと我に返り、並行して走っていたクスナのほうへ視線を向ける。変わらず駆けている様子にホッと安堵するのも束の間、ナルトが小さく口を開いた。
「お人形遊びはお前だけの特権じゃないよ」
「…どういう意味だ?」
セツナの役割は、標的である紫苑を背負う白の許へ、クスナ本人を行かせる事。つまり、セツナ自身は足止め兼おとりである。
現に、手裏剣を結ぶチャクラ糸は切られても、クスナを象っている人形のチャクラ糸は切られていない。
セツナの役目は、クスナに見せかけている傀儡人形を操り、その場にいるかのように見せかける事だ。
お人形、という言葉に、内心冷や汗を掻きながら、セツナは白々しくナルトに吼えた。
「こちらは二人。一人で勝てるとでも思っているのかっ!」
威勢良く叫ぶセツナに、ナルトは場に似つかわしくない穏やかな笑みを返した。
「君の人形劇は幕を閉じた。今は俺の演目だ」
パチン、と指を鳴らす。瞬間、セツナ
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