百六 人形劇の黒幕
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た水の鞭は宙を自在に駆け廻り、黒と白の蝶をあっさり呑み込んでゆく。
そのままナルト目掛けて飛びかかった水の鞭は、次の瞬間、標的の前に集う無数の黒白に勢いを削がれた。
「なにっ!?」
翅の鱗粉を無くせば、蝶は飛べなくなる。よって水で鱗粉を洗い流された蝶など、ただ地面に墜ちゆくのが常理だ。
その道理に反して、先ほど水に呑まれたはずの蝶がナルトの前で平然と空を舞っている。それも今度は倍以上の数の蝶が群れを成して、シズクの視界を埋め尽くしていた。
「チッ…増えたところで無駄だよっ!」
舌打ちしたシズクが手を振るうと、水の塊から水流がまたもや放たれた。空中を自在に駆け廻り、方向を鋭く変えて、四方八方から迫り来る水の奔流は黒白の蝶を薙ぎ払う。かと思うと、再びナルトの姿を覆い隠すほどの無数の蝶がシズクの眼前に現れた。
困惑するシズクの前で、今まで黙していたナルトがようやく口を開く。
「残念ながら、蝶ではないのでね」
森の中へ駆け込んだ当初、草木の合間を縫ってナルトは流れるような自然な動きで、咲いていた花から二枚の花弁を取った。花弁を蝶にしたその正体は【黒白翩翩 耀従之術】である。
外見は蝶だが、花の花弁に過ぎない上、元が植物故に水には強い。更には、攻撃されると自ら増殖する術を与えられている為に、シズクの水遁の術に襲われても増える一方だ。
蝶が優雅に空を舞う景色は一見美しいが、その数も多過ぎると異質なものとなる。無数の蝶に包囲される異様な光景に、愕然とするシズクの耳に澄んだ声が届いた。
「さて、幾つか質問させて頂こう」
穏やかだが有無を言わさぬ口調で、ナルトがにこり微笑む。黒白の蝶に囲まれて佇むその様は、ぞっとするほど美しかった。
「君達の主は【魍魎】という名の魔物か、それとも【魍魎】を解き放った人間か」
ナルトの問いに正直に答えるならば、後者だ。シズクの主人は昔も今も黄泉である。たとえ、その身が【魍魎】であろうとも。
黙り込むシズクの表情から察したのか、ナルトはすっとその蒼い双眸を細めた。
「まぁ大体想像はつく。【魍魎】の肉体は沼の国の祠。よって魂だけの存在を納める器が必要だ。大方、君達の主は【魍魎】に肉体を憑代として提供しているんだろう」
まるで見ていたかのような物言いで淡々と述べるナルトに、シズクは内心舌を巻いた。
「だが、大陸を破滅寸前まで追い込んだ存在に、人間の肉体が耐えるのは難しい…――もう一度問おう」
わざとそこで言葉を切る。次いでのナルトの質問は、シズクの動揺を煽るのに十分だった。
「君達の本当の主は、誰だ?」
【魍魎】の肉体が封
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