百六 人形劇の黒幕
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緩慢な動作で高く上げられた片足。
その爪先から、つうっと垂れた水滴が雫となって落下する。ゆるやかに落ちた露の玉は地面に弾かれ、儚く散ってゆく。
「…【水遁――」
瞬間、上げた片足を振り落とす。水滴の落ちた箇所は一点の染みを作るどころか、鋭い刃と化して地面を抉った。
「―――水上切】!!」
シズクの爪先から放たれた水の刃。ソレを目にしたナルトが軽く跳躍すれば、寸前まで彼が立っていた岩がスパッと真っ二つに裂ける。
ギタイと対峙している君麻呂をちらりと見遣ってから、ナルトは背後の森へ駆け込んだ。
その後を、爪先から放出する水に乗って、シズクが滑るように追い駆ける。
「ボクちゃんは森の中の木や岩でも盾にしようっていうのかな〜?」
地を這う水に乗って、シズクが嘲笑する。その様は氷上を滑っているようだ。障害物の多い森の中、ナルトを追って器用に移動していく。草木の合間を駆け抜けながら、ナルトの指が何かを引き千切り、そのまま苔生した巨石へ飛び乗った。
「ほ〜んと、お気楽でいいよね!」
ナルトの背中を挑発的な視線で追いながら、シズクは片足で、とん、と軽く跳ぶ。途端、シズクの爪先から迸る水の刃が二つに分岐し、ナルト目掛けて襲いかかった。
木の枝へ跳躍したナルトの視界端で、寸前まで乗っていた岩場が水の刃で砕かれる。
「あぁ〜そっかァ〜」
高く聳える木々の枝から枝へ飛び移るナルトを見て、得心がいったとばかりに、けれども嘲るような物言いでシズクが嗤った。
「ボクちゃんは上に逃げればいいと思ってたりするのかな〜?」
水は高所を攻撃出来ない。至極当然の事実をシズクは鼻で笑った。
「そういうのって―――好きだね!」
宙で一端足を入れ替え、上方へ蹴り出せば、水の刃が撥ね上がる。上空目掛けて飛び上がった水は高所の木の枝をあっさりと切り裂いた。
綺麗な切り口を残す枝をちらりと見遣って、ナルトは空中で身を捻りシズクと向き合った。口許へ手のひらを近づけ、ふっと軽く吹く。すると、黒い蝶と白い蝶がひらり、ナルトの吐息に乗って現れた。
「ボクちゃんはそんなか弱い虫に守ってもらうつもりなのかな〜?でもさァ〜…」
ナルトの傍で優雅に舞う二匹の黒白の蝶を、シズクは馬鹿にした表情で見上げ、おもむろに人差し指を頭上に差し上げた。するとシズクの足下から湧き出す水が、自然の摂理に逆らって下から上へ、指先へと集っていく。
「翅の鱗粉を失ったらどうなるのかなァ〜?」
逆巻く水はシズクの頭上で巨大な塊と化す。歌うように語るシズクの口調に合わせ、指先の水の塊がゆらりと波打った。
「【水遁――水龍鞭】!!」
術を発動するや否や、シズクの指先に集っていた水の塊から数多の水流が鞭の如く放出された。凄まじい勢いで迸っ
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