第二十一話 海と坂道の中でその十二
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「長崎が一番だよ」
「そうですよね」
「歩くことも楽しめて」
岡島はさらに言った。
「美味しいものも歴史も楽しめる、その楽しむ中で君はね」
「女の子になるんですね」
「そうなるよ、それで女の子になって療養所を出ても」
「それからもですか」
「何かあったら来てね」
療養所にというのだ。
「何でも相談に乗るから」
「そうしてくれるんですから」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「安心していいよ」
「お話を聞いてくれるんですか」
「させてもらうしね」
どちらもというのだ。
「安心してね」
「わかりました」
「本当に君は一人じゃないから」
このことも強く言った、優花に。
「安心するんだよ」
「不安はなく」
「そう、この街で過ごしてくれたら嬉しいよ」
「わかりました」
岡島のその言葉にだ、優花は頷いた。そして。
長崎の坂道も歩いた、今は晴れている長崎は空気まで澄んでいた。そして坂道の先に見える青い海を見てだった。
優花は目を細めさせてこう言った。
「いい海ですね」
「奇麗だね」
「はい、いつも療養所でも見てますけれど」
「長崎の海も奇麗なんだよ」
「そうですね」
「そう、そしてね」
岡島もその海を見ている、そのうえでの言葉だ。
「この海を見てね」
「長崎で、ですね」
「楽しく過ごしてね」
「リラックスですね」
「そう、君のプライバシーのことには注意が必要だけれど」
それでもというのだ。
「基本はね」
「リラックスしてですね」
「この街で過ごしてね」
「そうあるべきですね、あと」
「あと?」
「夏は泳げますよね」
海水浴のことも聞いたのだった。
「海で」
「海水浴場もあるよ」
「やっぱりそうですね」
「プールもね」
「あるんですね」
「よかったら泳いでね」
「はい、ただ女の子になったら」
ここでもこのことを思った、どうしてもこのことは思わざるを得ないことだった。
「水着も」
「変わるよ」
「服は全部変わりますね」
「そうなるよ、男装もいいけれどね」
「男装ですか」
「それはどうかな」
「しないです」
このことについてはだ、優花はすぐにこうすると決めた。
「何か僕に似合いそうにないですし」
「だからだね」
「何かそんな気がしますから」
「それならそうした方がいいよ」
「そうしてね」
「はい、泳ぐ時も」
性別が変わったその時はというのだ。
「水着も変えます」
「そのこともおいおい考えていってね」
「そうしていきます」
そうした話もしながら長崎の坂道を歩いていく、登り下りの激しい坂道は歩きにくいがそれでも一歩一歩楽しく歩いていった、優花は長崎を好きになってきていた。この日はそのことも実感した一
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