第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
13話 誰も知らない邂逅
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い。
しかし、目的地はこの地下。《牢獄》と呼ばれるエリアにある。
中央に鎮座する漆黒の板を迂回して、地下へ続く階段の前に守衛として立つ《軍》のプレイヤーに話を通し、地の底へと延びるような長い階段を降ってゆく。
面会を希望する相手のいる牢までは徒歩。面会室という気の利いた設備はないにしろ、直接会って話すのであれば場所はこの際問わないでおこう。
壁に掛けられたランプの灯火に照らされた通路を何度か曲がり、ようやく目当ての人物の姿を視覚に捉える。
「…………おや、珍しい客人だ」
相手も俺に気付き、感慨深げに声をあげる。
穏やかな物腰を感じさせる《男》ではあるが、牢獄に囚われているという事実が彼の態度をより一層に不気味たらしめる。
「アンタに、聞きたい事がある」
「私に? フフ、こんな男に向ける質問など碌なものではないのだろうが………それで君に満たされるものがあるならば、私も応じよう。とはいえ、いつ以来かな? 君にはまだ名前も聞けていなかったし、お礼を言えていなかった気もするが」
まるで、昔話でも興じるように、男は語り出す。
しかしながら、それに付き合うつもりは俺にはない。
あくまでも、これからの為に必要な情報を得ることを目的にここへ来た。
過去を振り返る為に来たのではない。断じて違う。
「気にするな。お互いに、礼を交わすほど気持ちの良い話でもなかっただろう?」
「………そう、だね。………では、過去の関係を不問として君と向かい合うとしよう………」
無駄話は不要との申し出を、男も承服して頷く。
つばの広い帽子に、銀縁で丸いフレームの眼鏡、裾の長い前留の衣服。
外見的な特徴は以前から一切損なうことなく留められている。
しかし、彼から滲み出る空虚な雰囲気は、これまでのどの記憶にもない変質だ。
――――《大切な部品を取り外されたまま動く機械》
そんな印象を抱かせる、言い様のない弱々しさと哀愁を、眼前の男は確かに纏っていた。
だが、容赦する理由には為り得ない。
彼の関与によって、間違いなくレッドプレイヤーが動いている。
グリセルダさんが殺害されようとした時は怯えた当人が零していたし、黄金林檎のメンバーが《笑う棺桶》に狙われた時に至っては本人が密談の場を設けていた光景を目撃した。どの場面にも彼の名前が聞いて取れた。直接的に殺害を依頼出来るパイプか、或いは間接的に接触できるコネクションか、何れにしても彼には言い逃れの出来ない《根拠》がある。
「話を聞かせて貰うぞ。―――――…………グリムロックさん」
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