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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十九話 マリーンドルフ伯の戦慄
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得しなかったようだ。

その結果、軍事の専門家であるヴァレンシュタイン元帥が呼ばれている。本来なら私は関係無いと言って逃げる事も出来た。しかしリヒテンラーデ侯に “卿も同行せよ、何事も経験だ” と言われては断れない。おそらく私に侯と元帥の間を取り持たせたいのだろう。

「侯、元帥、そろそろ行きませんと皆様お待ちです」
私の言葉にリヒテンラーデ侯が救われたように
「そうじゃな、そろそろ行くか」
と答え歩き始めた。

司令長官はしばらく動かなかったが、溜息を吐くと侯の後を歩き始めた。
「ババを引かされるのはいつも私だ」
呟くような司令長官の声だった。

御婦人方、ブラウンシュバイク公爵夫人とリッテンハイム侯爵夫人は南苑の一室で私達を待っていた。令嬢方は遠慮したらしい。臣籍に降嫁されたとはいえ陛下の御血筋の方だ。侯と元帥は片膝をついて礼を示した。私は二人の後ろで片膝をつく。

「忙しいところ、よく来てくれました。礼を言います」
落ち着いた声だ。どちらが言ったのだろう、ブラウンシュバイク公爵夫人か? リッテンハイム侯爵夫人だろうか?

「私達の夫が危険な状態にある事は聞いています。教えてください、私達は夫と再会することが出来ますか? 娘は父親に会うことができますか?」

微妙な沈黙が有った。上目遣いに見ると侯と元帥が微かに視線を交わしているように見える。ややあって司令長官が答えた。

「今のままでは難しいと思います。貴族達の暴発に巻き込まれ反逆者として生涯を終えることになるでしょう」
「!」
お二人が息を飲むのが分かった。司令長官の言葉が続く。

「私達が辺境への領地替えをブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯に提示した事はご存知でしょうか?」
「知っています。夫達はそれを受け入れました」

「それが成功すれば両家は暴発に巻き込まれる可能性は減ります。但し、御婦人方、御令嬢方にはオーディンにしばらく御留まりになっていただくことになります」

「ヴァレンシュタイン元帥、それは人質と言う事ですか?」
「そう受け取っていただいて結構です」
「そんな! 私達は皇帝フリードリヒ四世の娘なのですよ。皇帝の娘を人質に取ると言うのですか!」
先程までの落ち着いた声とは別な声が怒りに満ちた口調で私達を詰った。

「クリスティーネ、落ち着きなさい」
「ですがあんまりではありませんか、お姉様」
怒りに満ちた声が頭上に響く、リッテンハイム侯爵夫人か。だとすると落ち着いた感じの声がブラウンシュバイク公爵夫人だろう。

そしてリッテンハイム侯爵夫人の怒りを押さえつけるかのようにリヒテンラーデ侯の低い声が流れた。

「恐れながら、ヴァレンシュタイン元帥の申す通りにございます。お二方は陛下の御息女ではありますが、同
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