閑話 ―乙女の受難―
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タを食べればいいじゃない』と、解釈を間違えれば革命でも起こされかねない一文と共に、調理法が記載されていた。
バッタを非常食とする事は、飢えた民達が食べていると報告を受けた時に禁じた行為だ。
理由は、不衛生で体調を崩す者達が後を断たなかったからである。寄生虫や菌の概念が無い時代では原因の特定も難しく、食用とする研究を行うには時間が足りないと判断したのだ。
しかし、記載されていた調理法がその難題を解決した。
バッタを食用とするにはまず、一日絶食させて体液や糞を放出する必要があった。
その手順を飛ばして食していたから、食べた者達が体調を崩したのだ。
これを知った華琳は、直ちに秋蘭や典韋を始めとする料理人たちに試させ。
十分に安全性を確認した後、領民達に調理法を広めた。
その結果、魏国の食料事情は劇的に改善したのだ。
「コレが袁紹殿の文に記載されていた『バッタ炒め』です」
秋蘭の簡潔な説明を聞きながら、改めて目の前のソレに目を向ける。
体液を絶食にて無くし、豊富なタンパク元となる飛蝗を油ひいた中華鍋で炒め揚げる。
味付けは塩を少し。簡素な調理法で作られたコレは栄養満点で食べ応えがある。
何より、外に出れば幾らでも材料がある事が大きかった。
領民にも絶賛された料理(?)だが―――
「……」
やはり食べる気が起きない!
周知の通り、華琳は大層な美食家である。彼女は料理人の選別にも余念が無い。
そんな彼女が集めた高水準の料理人達により、飛蝗は形を崩す事無く炒め揚げられている。
今にも動き出しそうな姿で皿に乗っている光景は、夢に出てきそうだ。
「あれ〜、華琳様食べないんですか?」
「華琳様! この虫共なかなかいけますね!!」
そんな彼女の心情を知ってか知らずか、魏国が誇る大食い娘二人組みが飛蝗を食している。
愛しい春蘭の口元から飛蝗の足が飛び出ているのを目撃し、しばらく彼女との口付けは控えようと心に決めた。
「では華琳様、まず私が」
「秋蘭!?」
恐らくは魏国一の常識人である秋蘭が飛蝗を口に運ぶ。彼女も乙女の例に洩れず虫が苦手だが、これ以上足踏みしている主を見ていられなかった。
大食い娘達は食の感性においてどこかずれている。ここは主の味覚に近い自分が様子を見るべきだ。
自分の犠牲で少しでも主の助けになれば―――と、意を決して飛蝗を口に含んだ秋蘭だったが……。
「……む?」
「ちょ、秋蘭」
「あ、いや。今しばらくお待ちを」
何のリアクションも無く二口目を口に放り込む秋蘭に、華琳が目を丸くして驚く。
「うむ、やはり……。華琳様、この料理悪くはありません」
「ほ、
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