閑話 ―乙女の受難―
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を巻いてきた。
だからなのか、無理だろうと思う心の隅で、彼ならもしかしたらと思わせ―――
「……」
「か、華琳様?」
文に目を通した主の表情が消え、秋蘭が何事かと問いかける。
「袁陽が幽州と同盟を結んだわ」
「……意外ですね」
返事をしたのは郭嘉だ。華琳達の予想では陽の初動として幽州攻める事を予期していた。
そして白蓮が懸念していた通り、同盟や協定といった類の交渉が難しいことも。
果たして幽州はどのような利を用意したのか、異民族の事を考えれば兵も物資も惜しいだろうに。
「……」
思案に暮れる郭嘉の横で、秋蘭は冷や汗を流し続けていた。
同盟の話は確かに意外だ、主である華琳が驚くのも理解出来る。
しかし主が見せている無表情には、驚き以上に怒りの感情が含まれていた。
それほどまでにこの同盟が気に入らなかったのだろうか……。
確認しようと、主が乱暴に置いた文に目を通し――絶句。
そこには『我達、婚約同盟しました!』と言う一文と共に、精巧な男女の絵が描かれている。
顔の特徴からこの男女は袁紹と白蓮だろう。二人は幻想的な衣装を身に纏い。
口付けでも交わしそうな距離で見つめ合っている。
秋蘭は思わず天を仰いだ。
清涼剤にでもなればと郭嘉が見せたと言うのに、これでは火に油もいい所。
華琳が袁紹に友として以上の感情を持っていると言う事は、察しの言い秋蘭と郭嘉が知っている。
その恋慕に近い感情を抱いている相手に、自分達が蝗害で苦しむなか惚気同然の報告をされる。
目を通す直前まで上策を期待していただけに、華琳の胸中は穏やかでは無いはずだ。
きっと彼女の中で、袁紹の株が絶賛下落中に違いない。
「あ、秋蘭さん。二枚目が重なっていませんか?」
「おお、良く見れば確かに。……華琳様」
「……」
文に続きがある事を確認した秋蘭は、主より先に読むわけにはいかず、恐る恐る華琳に手渡す。
これ以上の爆弾が落ちないことを願いながら―――
「ッ―――これは!?」
秋蘭の願いは主の声と共に爆散した。
袁紹の文が届いてから数日後、結果から語ると蝗害による食糧危機は解決した。
「コレが、そうなのね」
「はい、コレがそうです」
現在華琳は、食糧難を解決した料理を前にして息を呑んでいた。
二枚目の文に書かれていた調理法に則り作られたコレ。領民達に強いているコレを食すため、周囲の反対を押し切って昼食としたが―――
「……」
コレとは即ち飛蝗であった。
袁紹が寄越した二枚目の文には、どこぞの王妃様よろしく『稲穂がバッタに食べられるなら、バッ
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