第三話 INグレンダン(その1)
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を改めて知る。
『あいにくですがクラリーベル様はそちらにはおられません。ニーナ様の事をお伝えした所、今そちらに向かっておられます。申し訳ありませんが荷物はその者に預けて後ろの敷地内へ移動していただけますか』
そういわれてニーナが後ろを向くと高い塀が通りの端からずっと続いていた。言われるままに荷物を門衛に預けるニーナ。旅をする者として荷物は最小限に貴重品は常に身に着けられるように、の原則にのっとっているためたとえ鞄の中身が無くなったとしても困ることはない。と言っても本当に無くなるなどと考えているわけではないが。
「キュアンティス卿、といいましたか、どちらから入れば?」
見渡す限り塀によって区切られた土地であり門や扉といった中へ入るための部分が全く見当たらない事に疑問を口にする。
『構いません、乗り越えてください』
その言葉に納得はいかないものの塀の上に飛び乗る。するとそこから見えた光景に思わず目を疑ってしまった。
見渡す限り何もない大地が広がっていた。通常なら高級住宅地にふさわしい豪壮な邸宅が建っているはずの土地に人工物が何一つ存在していないのだ。かといって木々が生い茂っているわけでもない。所々に申し訳程度に生えているだけのかなり荒れた地面を晒しだしている。
『ここは鍛錬に使われる場所で武芸者であれば誰でも使用可能とされていまして幾つかあるうちの一つです』
「それはわかったが何故ここなんだ?」
クララに会いに来ただけであり相手もそれを承知しているにも関わらず、案内されたのは建物が欠片も無い更地である。不満と言うよりも単純に疑問を覚える。
『それは……』
不意に背後から何かが迫る気配を感じ前に向かって飛びながら反転し、正体を確かめようとする。
ニーナが寸前まで居た所に突き刺さったのは赤い蝶のような形をしたもの。それはクララがよく使う剄技の一つ、外力系衝剄の化錬変化、焦羽蝶。更に自分に向かってくるものを剣帯から抜きだし復元させた錬金鋼、ツェルニから貰った双鉄鞭で迎撃する。
『……クラリーベル様がとてもいい笑顔で天剣を掴んで行ったからです』
「……よくわかった」
そのクラリーベルの姿はと探したところであまりの光景に目を疑ってしまった。
焦羽蝶が飛んできたその先にクララは居た。漆黒の衣服を身に纏い、紅い一対二翼の翼を背負い何の足場も無い空中に浮いている。
その翼は振る毎に焦羽蝶となりニーナに襲い掛かる。無数に飛び交う蝶を避け、叩き落とし、金剛剄で弾き返す。短時間ではあったが激しい爆発の嵐を潜り抜ける。
その間にクララは近づいてきてはいたが依然として空中にとどまっている。違う点といえば焦羽蝶に変換した分背負う翼が小さくなっていることだ。
いきなり何をするのかと問いただそうとするがその前に再びクララが動く。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ