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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十七話 余波(その3)
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「地球制圧を命じられた。出撃は明後日、地上制圧部隊としてリューネブルク少将の装甲擲弾兵第二十一師団が同行する」
俺の言葉に二人が頷く。ケスラーが口を開いた。
「先程、カッセル街にある地球教団支部で地球教徒と警察が銃撃戦になったそうです。憲兵隊に知り合いが居るのですが彼が教えてくれました」
「そうか……」

始まった、と思った。何が始まったのだろう、地球教の鎮圧か? よく分からないが何かが始まったと思った。
「一時間後に会議室で第二十一師団と合同作戦会議を行う。準備を頼む」
「はっ」



帝国暦 486年 9月16日    オーディン オフレッサー元帥府 ウルリッヒ・ケスラー



ミューゼル提督の私室を出るとクレメンツが話しかけてきた。
「地球制圧ですか……。あの星には軍事力は殆ど無いはずです。制宙権の確保は難しくは無いと思いますが……」
「私もそう思う。油断はできないがどちらかと言えば問題は地上制圧だろう。あの星の大地はシリウス戦役以来汚染されたままだと聞いている……」

クレメンツが溜息を吐いた。
「情報が有りませんな。地球教団の自治に任せたため地球については殆ど何も分からない」
「止むを得んさ。何の価値もない星だ、少なくともこれまではそう思われてきた……」

太陽系第三惑星地球。銀河連邦、銀河帝国時代を通じて自治権が認められた。人類の母星として尊重されたのではない。シリウス戦役後の地球は壊滅的打撃を被り人口は大激減、既に資源は枯渇し産業も存在しない無価値な惑星でしかなかった。

銀河連邦、銀河帝国、そのどちらの統治者達も無価値となったかつての人類の母星を自治を認めるという形で放置した。下手に関わり合えば「人類の母星」という言葉を振りかざし何かにつけて特別扱いを求めるだろう。自治は地球に対する丁重な絶縁状だったと言っても過言ではない。地球は九百年間無視され続けてきた。

「それでもヴァレンシュタインと戦うよりはましですかな」
「それを言うな、副参謀長」
「そうでした、申し訳ありません」
クレメンツがバツの悪そうな表情をしている。溜息が出そうになるのを懸命に堪えた。

ヴァレンシュタインが我々のシミュレーションデータをダウンロードしていた。あの第七次イゼルローン要塞攻防戦で彼が言った言葉、我々を皆殺しにするつもりだったという言葉は嘘ではなかった。少なくとも否定は出来なくなった。

あのゼーアドラー(海鷲)での衝撃以来、誰が音頭を取ったわけではないが自然とヴァレンシュタインの事を調べ始めていた。幸い資料はミューゼル提督が持っていた、我々が資料を見たいと言うと提督は一瞬考えるそぶりを見せたが“口外するな”と言って閲覧を許可してくれた。

八百三十六戦して五百三勝、三百三十三敗。ヴァ
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