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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十七話 余波(その3)
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い。馬鹿げている。

和平のチャンスではある、しかしシトレの言うとおりハードルは高い。少しの間皆がそのハードルの高さを自問するかのように沈黙した。ややあって話し始めたのはシトレだった。

「帝国にとっての懸案事項の一つは国防委員長も指摘したが、帝国が混乱した時同盟が攻勢を強めるのではないかという事だろう」
「イゼルローン要塞を中心とした攻防戦か……」
私の言葉にシトレが首を横に振った。

「レベロ、これまではそれで良かったかもしれん。しかし今日からは違う、フェザーン回廊が有る」
「なるほど、フェザーンか……」
思わず顔を顰めた。どうも悪い材料ばかり出てくる。

同盟軍は今フェザーン回廊を目指して航行している。場合によっては攻撃する事も有り得る。つまりフェザーン回廊の中立は失われたわけだ。同盟も帝国も今後はイゼルローン、フェザーン両回廊を考慮しなければならない……。

「それにヴァレンシュタインは以前フェザーン回廊を利用したイゼルローン要塞攻略作戦をグリーンヒル大将に話している。私も聞いたが作戦案としては秀逸だと思った。ただ当時は政治状況がフェザーンに兵を向ける事を許すかどうか分からなかった。それもあって実現はしなかったが……」

「今は実現可能と言うわけか」
「あの作戦案を聞いた人間は他にも居る。あれが上手くいけばイゼルローン、フェザーン、両回廊が同盟の手に入るんだ。作戦の実施をと叫ぶ人間が出るのは確実だろうな」
シトレの表情も渋い。皮肉な事だ、和平の可能性が見えてきた今になってイゼルローン要塞を攻略する可能性が出てきた。

「帝国としては国内の混乱に同盟が介入してくるのは避けたいはずだ。となれば……」
「どの程度の物かは別としてあの二人は改革を選ぶ可能性が有る、そういう事だな」
シトレの後をトリューニヒトが続けた。皆、顔を見合わせている。

「晴眼帝と亡命帝の事か……」
「その通りだ、ホアン。帝国にとっては同盟との休戦は何物にも代えがたいだろう。国内問題に専念できるんだからな。これからの交渉の中であの二人は必ずその辺りを確認してくるはずだ。改革の内容次第では休戦は可能だと答える事だ。和平を切り出すのはその後だろう」

トリューニヒトの言う通りだろう。表向きは地球教対策、裏では休戦の取り決め、改革の深度、そして和平を話し合う。
「ヴァレンシュタインの言う通りだ、政権を取る必要が有るな。帝国側は必ず最高評議会議長の言質を欲しがるはずだ。サンフォードでは無理だ、我々が政権を取らなければならん」
私の言葉に皆が頷いた。

スクリーンの呼び出し音が鳴って受信ランプが点滅した。ヴァレンシュタインか? シトレが受信ボタンを押下するとスクリーンにグリーンヒルが映った。厳しい表情をしている、顔色も良くない。シトレ
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