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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十八話 曙光
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を流すのです。そうなれば誰も両家を蔑むような事は無いでしょう」

「……」
「それに辺境の開発はかなり大変です。人口も少ないですし、十分な産業基盤も無い。両家とも税を払いながら開発を行ない、軍も維持もしなければなりません。容易ではないでしょうね」

「無理だ、税を払いながら開発を行い軍を維持するなど不可能に近い。それでは自滅しろと言っているようなものだ」
フェルナー准将が呻いた。ブラウラー大佐も同意見なのだろう、しきりに首を振っている。他にも同意するかのように頷く人間がいた。

「軍は削減すれば良い。両家とも一個艦隊程度にまで削減すればかなり違うはずだ。艦艇そのものは帝国軍が買い取る、兵も帝国軍に戻れば良いだろう」
「……」

「軍を維持するのは長い期間じゃない。自由惑星同盟に攻め込み、彼らの軍事力を殲滅するまでだ。長くても三年後には終わらせる。その後は軍を地方の哨戒艦隊程度にしてしまえば良い。そのほうが経費も削減出来、痛くも無い腹を探られなくて好都合だろう」

なるほど、その頃にはブラウンシュバイク公爵家もリッテンハイム侯爵家も課税、軍の維持、惑星の開発で体力を失っているだろう。政治勢力としての影響力も小さいものになっているに違いない。

「しかし、どうやって貴族達を振り切る。連日屋敷へやってくるんだ。辺境へ領地替えなどと言ったらどうなるか……」
フェルナー准将が困惑した表情で呟く。確かにどうやって周りを欺くか、それが問題だろう。

「何も言わずに領地に戻れば良い。そして辺境への引越しの準備だ、後は周りが勝手に反乱の準備だと勘違いしてくれるよ、アントン」
「卿は気楽だな、他人事だと思っているんだろう」

司令長官は声を出さずに笑った。フェルナー准将も笑う。ようやく部屋の空気が明るくなった。それを受けてリヒテンラーデ侯が周囲に話しかけた。

「現在の領地を返上し辺境の開発に力を注ぐとなれば政事を担う我等文官もその至誠は認めねばなるまいの。その上で新帝国成立のために遠征軍にも加わるか……、どうじゃな、皆ブラウンシュバイク公家、リッテンハイム侯家の恭順を認めるかの」

リヒテンラーデ侯の言葉に特に反対する声は無かった。フェルナー准将、ブラウラー大佐はヴァレンシュタイン司令長官の案を持ち帰り検討する事になった。

部屋から解放され、ヴァレンシュタイン司令長官とともに廊下を歩いた。隣を歩く司令長官の顔色はあまり良くない。具合が悪いと言うわけではない。何か気になることが有るようだ。

「どうかしましたか」
「いえ、先程の件ですが、ちょっと」
思い切って訊いてみると、やはり例の件だった。俺自身あの案には必ずしも納得していない。

「司令長官も気に入りませんか? 上手く行けばあの二人は救えるかもしれません。
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