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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十七話 絆
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持費は安くは無い、そして維持できる期間も短いとは言えない、しかし徐々に体力は弱っていくに違いない。
それに二年半という時間を政府が許すだろうか? 彼らがさらに改革を進めれば、当然だが時間は短くなるだろう。先行きは全くもって楽観できない。
いや、悲観的な未来なら容易に想像できる。
これまで払う必要の無かった税を払わなければならない。そして農奴を解放する以上、今後は荘園等で働かせる人間は金を払って雇う事になる。解放された農奴たちは少しでも条件の良い仕事を、待遇の良い仕事を選ぶだろう。
これまでのように力で従わせる事は出来ない。おそらく労働力は貴族間で奪い合いになるだろう。そうなれば貴族間での団結など欠片も無くなるだろう。そして新しい流れに適応できない貴族、財力の無い貴族から淘汰されていくに違いない。
「今のところ、我等は二年半持つ。しかし殆どのものはそこまで持たんと見て良い。連日突き上げにやってくるからな。彼らの危機感は相当なものだ。もっともこんな事は言わなくとも卿は解かっているだろうが」
ブラウンシュバイク公はリッテンハイム侯に苦笑交じりの声をかけた。余程嫌な思いをしたのだろう。侯は顔を歪めながらブラウンシュバイク公に問いかけた。
「私が今何を心配しているか、公はお分かりかな?」
「そうだな、暗殺かな」
「その通りだ、一つはヴァレンシュタインの暗殺。成功すれば良い、しかし
失敗すればそれを口実に攻めてこよう。我等が使嗾したといってな」
リッテンハイム侯の言葉に今度はブラウンシュバイク公が身じろぎした。表情は見えないがおそらく顔を歪めているだろう。
「もう一つは我らの暗殺だろう。我らを暗殺し、娘を担ぎ上げて反乱を起す、違うかなリッテンハイム侯?」
「その通りだ。先程の連中だが、私の命を狙う者がいると忠告してきたのだ」
「……」
「君側の奸であるリヒテンラーデ侯、ヴァレンシュタインを討とうとしないウィルヘルム・フォン・リッテンハイムは貴族の誇りを忘れた卑怯者だ、これをまず血祭りに上げ、正義の戦いを行なうべし……そう騒いでいる連中が居るとな」
「卿も苦労するな……」
思わず、シュトライト准将と顔を見合わせた。リッテンハイム侯が貴族達から突き上げを食らっている事はわかっていた。しかし、そこまで状況が悪化しているとは……。しかし次のリッテンハイム侯の言葉は俺たちの予想をさらに超えるものだった。
「フッフッフッ。私に忠告した者たちが、その騒いでいる連中さ。これ以上躊躇するなら命を奪うと脅しに来たのだ。馬鹿どもが!」
「!」
リヒャルト・ブラウラー大佐、アドルフ・ガームリヒ中佐も驚いた顔を見せていない。つまりリッテンハイム侯の思い込みではない。このままでは間違いなくリッテンハイム侯は暗殺され
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