Side Story
少女怪盗と仮面の神父 26
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た後では二度とシャムロックの罪を自覚させられない。……貴方方は卑怯だ。後回しを匂わせておいて、その実ミートリッテさんの選択肢を気付かれない内に消し去ろうとした。考える機会を与えず、反省する機会も与えず、本人とは目を合わせないまま護り育てた気になって。この娘の自立心を妨げているのが彼ら自身だと、何故気付かないのですか」
(……選択肢? 選ぶ権利? 何の話?)
自分に関する話なのは解るが、内容が殆ど掴めない。
一つ確かなのは、此処に集まった人間も結局(話題の張本人にとっては)不親切な会話しかしない点だ。
徹底した嫌がらせの域。いっそ清々しい置き去り感に、不平不満も引き籠る。
「貴方も一度は納得されていたではありませんか! だから協力してくださったのでしょう!?」
「確かに。ですが、イオーネさん達と話せたおかげで迷いが晴れましたよ。事実を伏せても、誰一人成長できないのだと」
「おやめください、アーレスト様! 例え貴方でも、これ以上は本当に制裁を免れなくなります!」
三人の影が一斉に頭二つ分沈む。
微かな金属音は、腰に帯いた剣の柄を握ったからか。
「……お聞き分けください。貴方は既にお気付きでしょうが、あの方が此方に向かっておいでです。奴らの掃討に出た主達はまだ知りません。一堂に会してしまったら、絶対に引き返せない。それもまた、選択肢を奪うのと同義ではありませんか! 寧ろもっと質が悪い! 信仰とは違い、試しに入ったけど合わないから辞める、では済まされないのですよ!?」
「ええ……身に染みて理解しています。だからこそ私が動いたのですよ。この娘が組み込まれても、私の立場なら救い出せる」
「アーレスト様……っ」
神父の言葉が決裂の合図になったのか、三方向で剣身を抜き放つ音がした。殺気は感じない。三人はどうあっても神父と怪盗を「捕獲」したいらしい。
「……職務の邪魔をするのは心苦しいですけれど……ミートリッテさん。少しの間、耳を塞いでいてください」
「へ? あ、はい」
咄嗟に両耳を手で覆い。ふと、大人しく言う事を聞いている自分に眉を寄せた。
アーレストは裏切り者なのに、言いなりになってどうする。
反抗心で手を下ろそうとして……動かない。
(え? あれ!?)
指先が痺れ、関節が硬くなり、体全体が石になったかと思うほど冷たく、重い。何時間も同じ姿勢を取り続けた後の硬直に似てる。
(な、なに!? 急になん……)
カン、カラン! と乾いた音が響いた。焦るミートリッテの周りで人影が輪郭を失い、草木の闇と一体化する。全員、地面に膝を突いたのだろうか。
「アー……レスト、様……!」
苦しげな男声を置き去りに、神父は……走った。
顔に体に、凄まじい風圧が押し寄せる。
(ぅっわ……速っ!
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