第十話「立ち向かうために」
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イミィは言った。エイミィはリオンについてクロノから話を聞いていたため余り良いイメージを持っていなかった。
きっとなのはから聞いたら全く別の印象を抱く事になっただろうに
「…でね、こんな人がいたんだ。最初はただ酔っ払っててちょっと嫌な感じだったんだけどお兄ちゃんがその人のコンタクトを探してあげたの。結局コンタクトは見つからなかったんだけどその人はすごく感謝してて、お兄ちゃんに申し訳ないって謝ったの。そのあと五千円札で支払った後お釣りも貰わずに出て言っちゃったの。」
「ほう...そんな事が。」
クロノには皮肉っぽい態度で接している(無論これは戦略の上であってクロノに悪意は微塵もない)が今の会話から見て取れる通りなのはとは概ね友好な関係を築いていた...少なくともリオンはそう思っていた。
リオンはその事を自分で不思議に思っていた。確かにこのなのはと言う少女は戦力としては魔道士の中では一級なのだがリオンにとっては、彼が彼女をどうたらしこんだ所で全くメリットも無いのにどうしてか自然と柔らかい態度で接してしまう。シャルティエに聞いたら彼は「きっと彼女の人柄でしょう」と言った。確かに打算も無く無垢で優しいこの少女は人から悪意を持たれることなど決してあるまい。リオンにとって管理局に囚われている今、彼が最も楽しみにしているのは彼女との話と話をするときの差し入れとして持ってこられる彼女の家がやっている喫茶店『翠屋』のケーキだった。
「にゃはは...その時はお母さんもビックリしてたの。でも喜んでた。『恭也もこんな真摯な対応ができるようになったんだ。』って。私はその時奥にいたんだけどね。」
前に一度ボソリと「僕も翠屋に行ってみたい」と言う風な事を(勿論そんなに直接的な表現ではなかったが)言った事がある。それを聞いた時、なのはは満面の笑顔になった。その時リオンは改めて感じた。本当の意味で心優しい人間であり…そして間違いなくリオンには何も与えられないと言う事を。
「無理も無い、と言うよりもお前の親が奥へ連れていったのだろう?」
「うん、そうなの。危ないからってお父さんが。」
彼女にはリオンに与えられるものを何一つ持っていない。確かに、彼女の話にはリオンも惹きこまれた。だがそれは彼女の言っている事が『アイツ』に似ていたからに他ならない。リオンが心地よいと感じたのは懐かしさだったのだ。
時間にすれば決して遠くは無いのだろう、あの男と仲間たちと剣で斬り合いその果てに敗れ…
だがリオンにはあの海底洞窟にはもう戻れない気がした。きっとそれ程に、世界は遠い。だからリオンはなのはに『彼』の面影を感じるほど、酷く昔の事に思った。
懐かしいとは思えど、受け取れないのはもうそれをリオンが得ているから。
だがそれでもこの少女は優しかった。そ
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