第十話「立ち向かうために」
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海鳴市、数日前に「原因不明の自然災害」だとか「謎の巨大な爆音、その正体は?」とかそんな見出しが新聞の上で激しいダンスをしたことで話題になった市は、今はすっかりマスコミの影も消えうせオカルトマニアも退散していた。浮ついた住民もすっかり元通りの生活をして平穏を取り戻していた。
それを目下に見下ろす場所...次元艇アースラで船員の一人エイミィは溜息をついた。
「今日もめぼしい反応はなし...やっぱりあそこでジュエルシード六個とられたのは不味かったね...」
「…もう二十一個のジュエルシードは向こうとこっちで全部握ってるからな。これ以上探しても出てくる筈はない。」
ぶっきらぼうな口調でそう言った後板チョコをクロノは口に放り込んだ。床には包み紙が散乱していた。
エイミィは太るよ?だとか、鼻血でるよ?と言ったがぶすっとしてそれには返答しなかった。
クロノにとって今回のジュエルシードをめぐる騒動の中であの海上決戦こそが唯一の戦いだった。その戦いで何もできずに気絶させられたばかりかその汚名返上の機会らしい機会も今のところ無い。いや、もっと言えばもう機会など無いかも知れない。プレシアの根城の正確な場所がわからない限りは、敵がジュエルシードを21個全て必要としているとは限らないのでアレで事を始める可能性も十分にあるのだ。
こりゃあ本格的に不機嫌だ、と感じたエイミィは努めて明るい口調で話す事にした。
「わかってても調べたくなるとか、探したくなる事ってないかな?」
「知るか、機材費の無駄遣いは僕には理解できん。」
クロノの声はやさぐれていた。と言うのもこの数日間休みなくリオンの取調べは行われていてそれを担当しているのは他ならぬクロノなのだ。彼が今もリンディにリオンに対する『厳重な処罰』を求めて直訴し続けているのは言うまでもない。さらにこの数日間、彼の胃薬の量は増える一方だとも。
ただでさえジュエルシードの件は誰も責めないにもかかわらず責任を感じておりマイナス思考に陥りがちなのにその傷口に取調べと言う塩を塗りこまれているのだ。不快にならない筈がない。イライラして角に足の親指をぶつけてグキッと言う音を立てて叫ぶ事もあった。
…このエイミィと言う少女がそれを見て微笑ましく思っているのは別の話である。
とにかく今彼は地球の伝承にある『因幡の白兎』の様な状態なのだ。更に悪い事に本来兎を助ける筈の『大国主神』は非番と来ている。クロノとしては「そんな馬鹿な!」と叫びたい気分だった。
唯一の救いはリオンの取調べがなのはがリオンの部屋に通っているため時間の問題で普通の犯罪者よりは遥かに数が少ないと言う事だった。なのは様々である。
「しかしなのはは何が楽しくてアイツの所に行くんだろうな?」
さあ、とエ
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