青年時代後半編
第五十八話 教師
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私は扉の前でつばを飲んだ。
何しろこの扉の先にあるのは、もしかすると魔物より大変なものなのだ。緊張するなという方が無理だ。
そう思うほど、私の肩には『責任」の2文字が重くのしかかっているが投げ出すわけにはいかないし投げ出すつもりもない。やるからには最後までやり遂げる。
私は決意を固めて、扉を開けた。
「お早うレックス、タバサ」
「「お早うございます、ミレイ先生」」
声をそろえたのは私の目の前に座っている双子の兄妹のレックスとタバサ。
アベルとビアンカの子供であり、私はこの2人の先生に任命されたのだ。
話は少し前に遡る。
魔物の相手の実戦訓練の疲れを大浴場で癒して、風呂上りの時間を飲み物片手に本を読みながらリラックスしていた時の事だった。
マーリンが私の部屋に来て、オジロンさんが私を呼んでいると言ったのだ。
それを聞いた私はすぐに仕度を整えて、オジロンさんのいる国務室に向かった。
「それで要件はなんでしょうか?」
「貴女に頼みがあるのだが……レックス王子とタバサ王女の教師になってもらいたい」
「それは……」
普通だったら王族の教師なんて礼儀作法とか社会の仕組みとかそういうものを教えるものだがグランバニアではその意味が少し……どころか大きく変わってしまった。
7年半前のデモンズタワーでの戦いがあった日、城ではレックスとタバサがいきなり泣き出した。
どうやって宥めようかとサンチョさんや乳母さん達が考えていると、レックスが軽々と天空の剣を持って笑っていたらしい。(ちなみにタバサは笑ってはいなかったものの泣き止んでいたそうだ。)
驚いた事に天空の剣はそこになかったのに突然現れ、レックスがそれを扱えた。
この事からレックスは長年パパスさんが追い求め続けていた勇者であり、タバサも勇者ではないにしろなんらかの特殊な存在であるという事がわかった。
となるとまだ幼い勇者とその妹を教え導く存在が必要になる。
そして勇者の教師とはつまり。
「それはあの2人に魔法を教えろと言っているんですね」
オジロンさんは頷いた。
「その通りだ。レックス王子とタバサ王女には貴女が必要だ。……引き受けてくれますかね」
ただでさえ、人に何かを教えるというのは責任重大な事なのに私がやる事は世界の命運すら左右してしまうかもしれない。
でもだからと言って怖気付くわけにもいかなかったし、それに私はあの時聞いた。
『僕達の……子供を……、た……の、む………』
石になる直前アベルが言い残した最後の言葉だ。
私は仲間の子供を託されたのだ、だから私は断る事など少しも考えなかった。
「はい。2人は私が責任を持って育てます」
これが私が2人の教師となった
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