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約1つのラベルと心臓
第n+4話 両手が半生恥は一時
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じゃないし」
「そりゃそうだが」
「1人家族ごっこで学んだの。龍は大体なんでも食べるって」
「どういう状況だったんだよ」
「お父さんとお母さんが人間の筈なのに生まれた子供が純粋な龍で、『お前!こいつは一体誰の子供なんだ!』って」
「ホントそうだよ」
「その様子を聞きながら黙々と箸をポリポリ食べる龍」
「そこの描写いるか?」
「そう。龍が本当に望んでいたのは、親権がどうか消印が当日かかなんてちっぽけなことじゃなくて、早く大自然に帰りたいということだけだったのです」
「じゃあなんでその家に住み着いてんだよ」
「当時3歳の私にはその矛盾に気づかなかったのです」
 美都子は細い枝をさかばーもに握らせながらわざとらしくしんみりと呟いた。
「ぐいぱー、ぐい、ぱー」
 そんな話をしている間にも、食事の終わったさかばーもは呑気そうにふらふらと歩いている。
「……って歩けるのか!?」
「あら、ほんと。歴史的瞬間ね」
 2足歩行にまだ慣れていないのだろうか、その足取りはおぼつかないが、『初めの一歩』はとうに越している。
「親差し置いて俺達が観ちまうのか……」
 夏雄は誘拐犯にでもなった気分だった。
「まるで逆かっこうね」
「……なんか微妙に分かる」
 微妙に分かってしまった。
「千里の道も一時の恥って言うし間が悪いことはしょうがないわよ」
「それは分からねぇ」
「さって、ばも君の歩き記念として、金の王冠を進呈しなきゃ」
「やめとけ首の骨折れるぞ」
「大丈夫よ。ばも君の頭上で浮くように魔法がかけてあるわ」
「なんで魔法使えんだよ」
「30日間でカートリッジ交換が必要だけど」
「お前の魔法じゃないのかよ」
「適材下暗しって言うでしょ?」
「言わねぇ」
「適材黒髪男」
「それまだ引っ張るのかよ」
 美都子が取り出した王冠を放り投げると、よたよたと歩くさかばーもの上で王冠が動きを止めた。そしてさかばーもの動きに合わせてふわふわ浮かぶ。
「……ふと思ったんだけど」
 王冠をぼんやり目で追っていた夏雄は、呟く美都子の方に視線を戻した。
「夏雄君も2足歩行してるわね」
「そうだな」
「凄いわね」
「普通だろ」
「果たしてそうかしら?」
「そうだろ」
「コロンブスの卵って言うし、夏雄君も夏雄君が歩く姿を見て目から角膜が落ちたんじゃないかしら?」
「失明してんじゃねぇか」
「2階の手から角膜が漏れる」
「ホラーかよ」
上手(じょうず)(たなごころ)あれば水心あり」
「たな、え?」
「ともかく、夏雄君もあれね。偉いわね。こしあん辺りでもあげるわ」
「なんでこしあんなんだよ?」
「こしあんよりつぶあんが安しって格言があるのよ」
「格言かそれ?」
「っと、あらばも君」
 突然、美都子がさか
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