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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十六話 ギルベルト・ファルマー
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定できるのだ。王国といって良いだろう。

当然だが商人たちにとっては不要な、あるいは不当な関税をかけられる地方王国の存在は有難くない。また気まぐれな貴族の影響がモロに出る地方王国と帝国の直轄領とどちらが商売をしやすいか、考えるまでも無いだろう。帝国が真に統一されれば確かに経済効果は大きいに違いない。

「改革に反対しているのはごく僅かだ。それも貴族との間に腐れ縁ともいうべき関係を結んでいる連中だな。貴族が滅びれば自分も滅びる……。貴族を心配してのことではない、自分が心配なだけだ」
何処か冷笑するかのような口調だった。

「フェザーンは当てには出来ない、そういうことですね」
「フェザーンの商人に関してはそうだ、だがルビンスキーがどう考えるかは分からんな」
「……」

俺の沈黙をフェザーンをどう利用しようか、それを考えていると受け取ったのだろう、ギルベルト・ファルマーは心配そうな声で話しかけてきた。

「フェルナー、フェザーンに関しては余り期待しないほうが良いだろう」
「ルビンスキーが信用できない事は分かっていますが」
「そうではない。ここ最近、反ルビンスキー派というべき存在が力をつけてきている」

「反ルビンスキー派? まさか!」
俺の言葉に頷くとギルベルト・ファルマーは答えた。
「一年前には考えられなかったことだがな。彼らの後ろに帝国がついている可能性が有る。レムシャイド伯が接触しているようだ」

「まさか、エーリッヒはフェザーンでクーデターを起そうとしていると?」
思わず、声に震えが走った。

貴族だけではない、エーリッヒはフェザーンも一緒に片付けようとしているのだろうか? 片付けられなくとも混乱させればルビンスキーは帝国に積極的な介入は出来なくなるだろう。狙いはそちらか……。

打つ手が早い、それに抜け目が無い。感歎とともに悔しさが心を占める。負けられない! 胸の中でふつふつと何かが湧き上がってきた。思わず拳を握り締める。

「分からんな。だがレムシャイド伯が単独で動いているとは思えん。それに帝国にとってルビンスキーの力が弱まるのは悪いことではない、そうではないかな?」

確かにそうだ。それにしても……。
「惜しいですな、今、貴方が公の傍にいれば、どれだけ公の力になることか……」

俺の言葉にギルベルト・ファルマーは首を振って軽く笑った。
「今の私ならな、以前の私なら伯父上の頭痛の種だろう。ヒルデスハイム伯のように」

確かにそうだ。思わずこちらも苦笑が漏れた。そんな俺を見ながら彼が言葉を紡ぐ。

「フレーゲル男爵は死んだ。あの時私は全てを失ったと思った。だがそうではなかったのかもしれない。あれはフレーゲル男爵という爵位に振り回された私だった……」

爵位か……。貴族としての
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