暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
幻想天舞(1) 〜天翔けし白翼〜
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翔けていく。
 
 もう一度旋回して地上へと舞い降りるには、少しだが時間が掛かる。
 そのあいだに校舎内か、もしくは校舎自体を盾に出来る場所まで逃げ切れば当座の安全は確保できる。



 ただひとつ、失敗だったのは。
 神代に生きた神秘そのものである天馬と、その操者であるライダーを侮っていたこと。



 レーシング競技などで目にすることがあるドリフト走行。
 意図的にグリップを失った状態を作り、車体の向きをコントロールする技術。

 そのドリフトよろしく、天馬はあろうことか急激に身体の向きを変える。
 速度調整、姿勢制御、熟練した業による方向転換により、進路を逆転した天馬が再びこちらに敵意を向ける。

 そんな何でもない技術が、天翔ける存在にも適用できるなどと想像できようものか?

 車によるドリフト走行の存在は知っていたし、そういう技術があることも知っていた。
 それを彼女らにも可能であると考えなかったこと、いやそれ以前に発想することすらなかったことが俺の失態だ。
 もとより空中における物理法則などに詳しいはずもなく、そも天空を走る存在に地上での法則(ルール)を当てはめること自体愚昧であると言えるのかもしれないが。

「チィッ!」

 校舎までは凡そ10メートル弱、進入出来る場所を考えれば距離以上の手間がある。
 その距離を人間が走り抜けるまでの時間で、天馬は地上と天空を何往復できるだろうか。

 振り返ればそこには、既にこちらを射程圏内に収めているライダーがいる。

 数秒の加速の後、そこにはオレの粉々になった姿……もしくは蒸発して消え失せる未来が待っているだろう。

 だが万策尽きたなどと諦めるつもりは毛頭ない。
 まだ数秒間の猶予があるんだ。ならばこの数秒の間に、生存するために打てる手段の模索を頭の中で駆け巡らせる。

 …………時間が遅くなったような感覚。
 すぐに訪れるであろう天馬の衝突はなく、後ろのライダーを視界に捉えながらそれが未だ先の事であると知覚する。

 刹那に十を超える術策を仮想するも、どれも現状を打開出来るものではない。
 死の間際の走馬灯に等しい錯覚の中にありながら、それでも自身の死はすぐ間近まで迫っている。

 そうして来る最後の瞬間。
 天馬が空を踏み、宙を翔ける音を聞きながら死を覚悟した瞬間──────

 オレを救ったのは、先ほど見た魔眼潰しの魔丸だった。

「ッ!?」

 虫の知らせか天馬からの警告か、背後から飛来するモノに気づき急速旋回と方向転換で弾丸を回避する
 既に両眼を失っているライダーに追尾の特性は発揮されないのか、弾丸は校舎の壁の中へと減り込み止まる。

 そしてオレも救われたとは言っても、完全無傷とは
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