暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
幻想天舞(1) 〜天翔けし白翼〜
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 目の前に広がる光景を、まるで夢か幻であるようにしか思えない。
 だが否定しかける意識を差し置いて、本能がそれを強制的に認識する。





 圧倒的なまでの魔力の奔流、神大たる幻想の顕現。
 矮小な人間ごときが目を逸らすことなど許さない、不敗の剣(クラウ・ソナス)の光すら霞むような、厳然たる神秘がそこには存在していた。

 自然と視線が上空へと誘われていた。
 聞こえるのは羽ばたき。羽ではなく翼、それも大翼が空を叩く音。
 紅血結界に覆われた紅い世界に在りながらも、その威厳を全く失わない圧倒的な純白。

 ライダーの眼窩から流れ落ちる赤。
 血涙を流す女神(メドゥーサ)を背に乗せて天を舞うは、神話に語られし伝説の幻想種。

 勝利の確信に満ちた微笑を湛え、ライダーが手綱を駆る天馬(ペガサス)が流星のように翔け落ちる────!!





「ぐっぅッッ!!」

 何かが光ったとしか感知できなかった。
 何かが通り過ぎたことしかわからなかった。

 しかしギリギリの域で捉えたその認識ですら、敵の攻撃の数秒後に理解したのだという事実に戦慄した。

 数瞬の後、耳に響く金属音。地面に音を立てて転がる白銀の宝剣。
 見間違えようもない、己がサーヴァントであるフェンサーの宝具。

 サーヴァントが宝具を手放す筈はない。ならばその持ち主たるフェンサーは、一体何処に消えた?

「かッ、は……ぁ…………」

 そうして────オレはフェンサーがどうなったのかを、ようやく把握した。

「ッ! フェンサー!!」

 校庭のほぼ中心に居たはずのオレとフェンサー。
 だが今彼女が居る位置はグラウンドの端、距離にして数十メートル以上。

 今の一瞬、恐らく天馬による突撃……ただの体当たりで、彼女は数十メートルもの距離を吹き飛ばされ壁に激突した。

 校庭端にある学園敷地を仕切る壁が、ダンプカーでも突っ込んだかのように崩壊している。
 人の知覚が及ばない速度での突撃の威力などもはや語るまでもなく、その衝撃はただの人間であれば粉々に砕け散っていたであろう。

 どれだけ防護の手段を講じようと、生半可なモノでは壁にすらならない。
 そもそも存在していることが既に神秘である幻想種相手に、半端な魔術や守りなど通用するはずもない。
 一撃で潰されていない以上直撃だけは避けたのだろうが、フェンサーが負ったダメージは決して軽視できるものではなかった。

「さて……それでは、先にマスターの方を潰しましょうか」
「っ……!」

 女神の殺意と天馬の敵意がこちらに向けられたのを感じた。
 フェンサーを轢き飛ばした勢いのまま、天上を翔ける彼女らの次の標的は自分。

「逃げられません
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