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FGOで学園恋愛ゲーム
十話:夏と雨
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「物理麻酔をしてもかまいません」
「流石だぜ、母ちゃん!」
「流石じゃありません! もうお菓子をあげませんよ、モードレッドォ!」

 やけに息の合ったコントを繰り広げる三人に背を向けながら二人は保健室から出る。

「これで安心でござるなぁ」
『うん。怖いけどちゃんと治してくれるからね、先生は』

 二人揃って晴れやかな表情で語り合う。
 何より掃除に準備にとやるべきことはまだ山ほどあるのだ。
 一人の犠牲で足を止めるわけにはいかない。

「しかし、校舎にいても嫌でも夏だと思い知らされる」
『海にでも行きたくなる』
「海でござるか、確かに夏の定番。……む。拙者、今素晴らしい一句が閃いたので聞いてはもらえぬか?」

 特に断る理由もないので黙って頷く。
 小次郎はそれを受け自信満々な顔で読み上げる。

「夏の青 浜辺でデレる マルタどの……ふ、ふふ…ありえぬ、ありえぬなぁ」

 二人は同時に夏の海で水着を着てデレるマルタを想像する。
 しかし、小次郎の方は人の夢とは儚い物だとでも言うように諦めの表情を見せる。
 勝手に想像して勝手に否定するとは実に失礼なことである。

『小次郎さん……』
「いや、今のは忘れて―――グホッ!?」
『マルタさんがすぐ傍にいるって言おうとしたのに……』

 そんな小次郎の体に強烈なボディブローが突き刺さり小次郎は地面に這いつくばる。
 まるでゴミでも見るかのような視線を小次郎に向けながら件の人物マルタは指を鳴らす。

「なに変な想像してんのよ、へっぽこ侍! というかあり得ないってどういうことよ?」
『マルタさん、地が出てます』
「あら、こほん。小次郎、人をネタにして笑うのはよくないことですよ」
「笑ってなどおらんよ。ただ、想像することすらできずに嘆いて―――ガハッ!?」

 今度は小次郎の体ごと持ちあげる鋭いアッパーを繰り出すマルタ。
 彼女は前生徒会長で“笑顔”と“祈り”を武器に学園をまとめ上げた存在だ。
 未だに下級生からの信頼は厚い。

「花も恥じらう乙女に対してその態度……悔い改める必要がありそうね」
「最近の乙女とは拳で語り合う娘のことを言うのか。いや、勉強になった」

 ふらふらと立ち上がりながらもニヒルな顔でちょっかいを出し続ける小次郎。
 彼の精神力は見習うべきところがあるがその生き様は見習わないほうがいいだろう。
 校舎中に鳴り響く一際重く鋭い打撃音を聞きながら、ぐだ男はそう思うのだった。

『減らず口 叩けば増える 打撃音』

 一句読み上げ、事の次第を剣道部員に伝えるために来た道を戻る。
 途中までは何事もなかったのだが、突如として理科室から言い争う声が聞こえてきたので中を覗いてみるぐだ男。

「見学会
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