もしもトウカが剣士さんじゃなかったら4
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あぁ私は弱い。そういうことをこの旅では何度も突きつけられたよ。オディロ院長の死を何も出来ずに見ているだけで、何故か目をつけられドルマゲスに吹っ飛ばされるだけ吹っ飛ばされて。怪我を治してもらったのに心が痛くて痛くて仕方がない。涙がこぼれそうだけど、私はあいにく泣くことは出来ない人間だ。
だから俯いて、目立たないようにしていることにした。今はなるべく人と話したくない。そんな感じだ。
新たな仲間、ククール。自信に溢れるその言動は眩しくて、きっとすぐにヤンガスみたいに他人行儀になってしまうのだろうけど、せめてゼシカみたいに気安く話して欲しいな、なんて勝手に思いつつも彼が喋るのを見ていた。手にぴったりくるグローブを嵌めたまま拳をひたすら固めて。なんとなく不意打ちが来るかなと思って身構えていたのだけど、それは正解だった。
「改めて、俺は聖堂騎士のククールだ。よろしくな」
「うんよろしく。僕達の紹介、いるかな?」
「……あーーっと。エルトにゼシカ、ヤンガスだろ?で、そっちのレ」
「……ボク?」
やっぱりだ。彼とほとんど話もしなかったし、私の名前をわざわざ彼の前で言うことなんてなかったから私の事は知らなかったんだろう。彼に聞かせるのは申し訳なくて、私は割り込むように口を開いた。
「ボクはトウカだよ。よろしく」
「あぁ」
それにしても目立たないようにしていたのにそれでもわざわざ気を使ってくれるのは優しいな。態度も堅くないし。ちょっと嬉しい。
出来る限りにっこり笑ってみたら、どうだろ、八十点かな。それでもククールは笑い返してくれたし、純粋にそれは嬉しかった。ヤンガスとか目を逸らすもの。エルトはそもそも笑うことすら許さない堅さ。ゼシカはなぜだかこっちにこないし。仲良く、なれたらいいな。
すぐに後ろに引っ込んだからこの濃いメンバーに大人しいのがいるんだな、なんて軽口を叩いたのにみんなが微妙な態度で返事をしたのに気づかなかった。だいぶ後、話せるようになったエルトに怖かったんだと告白されることになる。でも私はブーメランでライティアを狙うエルトの方がよほど怖かったけれど。それはまた、別の話。
・・・・
「あ、魔物」
新しい仲間のククールとぽそぽそ取り留めのないことを話しながらアスカンタに向かって進んでいると、魔物が私たちの前に飛び出してきた。見慣れないオレンジ色のスライム、つまりスライムベスや黄緑のスライムに乗ったスライムナイト。そいつらに囲まれてしまった。
ククールって、私はマシュマロが好きなことしか話してないのにもう軟弱さに気づいてくれたみたいで、魔物に気付くと騎士らしく、守って魔物から遠ざけてくれた。嬉しい、旅の始まりの頃ならこのまま守られていただろうね、それぐらい嬉しかった。
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