もしもトウカが剣士さんじゃなかったら4
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「……すぐに分かるよ。悪いお人じゃないから、話すのはあまり問題ないけど、外に出たら、近寄らない方がいい」
「ごめんだな。あの柔肌に怪我してるっていうのに」
「……柔肌……?」
死んだスライムナイトだったものを蹴り捨てていただけなのに後ろから話しかけられてびっくりしてしまった。肩がビクッてなったのに笑われて、あぁ、誰かと思えばククールだ。
「怪我してるだろ、ちょっと出せ」
「……え?」
最初の頃のエルトみたいに、傷に向かってホイミを唱えてくれた。そのくせ最初のエルトと違ってすぐに背を向けないんだ。なんで?
「あのな。怪我しに行くのは違うぜ」
そして肩を掴まれる。真面目な目に、父上みたいに私をまっすぐ見て、私に、私に、目を逸らさず話しかけた。私はといえば、ヒィと言いそうになったのを必死に飲み込んでいた。
「怪我っていうのは見てる方も痛いだろ。負ったやつはもっと痛……」
「ありがとう!」
怖かったけど、ククールは優しい人だって分かった。私とお話もしてくれる、必要ない敬語だってしてこない、でもごめんなさい、私人間と目と目を見つめ合うと恥ずかしいし怖いしで……、これが魔物だったら今頃五発ぐらい殴れてるところだけど。
「怪我、しないようにするね」
だから本当にごめんなさい、もう少し離れてお話させてくれませんか。そういう気持ちを込めて数歩下がって見上げれば、何故かククールは哀愁を漂わせてそこにいた。
「……あ、私対人恐怖症で……」
「対人、ね……」
「魔物とかは撲殺できるけど……」
「あぁ……」
「もう少し、離れてお話しよう?」
なんて言ってたら飛び出してきたはぐれ幻術師に私の思考は奪われた。胸のトキメキは拳に込めて。一発じゃ到底倒せないから、馬乗りになって何度も何度も。普通の魔物より柔らかい手応え、癖になりそう。吹き出す体液が顔にかかったのは拭うけど、体中ベタベタになってもまぁ仕方ない。服はちゃんと洗うけどそれはだいぶあとかなぁ。
だから言ったのに、と言う言葉が聞こえた気がしたけど、戦闘が終われば私はさっきと同じようにククールの隣で取り留めのない話の続きをしたんだけど。何故か、ククールは目を逸らさなかった。
その時は。
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