―HERO―
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いつものデュエルアカデミアの深夜、俺はなんとなく森を散歩していた。
完全消灯まで後数時間といったところで、もうあまり人の影は見えないのだが、この暖かい島での夜の散歩というのがこれでなかなか面白い。
……たまに、カードの精霊と思しきぼんやりとした影が、見えたり見えなかったりするのが問題点と言えば問題点だろうか。
……この頃は、薄ぼんやりと見えたりしてしまう。
たまに考えてみるのだが、カードの精霊とは何なのだろうか。
聞いたところによると、十代にはハネクリボーの精霊が、万丈目にはおジャマ三兄弟と不特定多数のカードの精霊が憑いており、自分には、この《機械戦士》たち全ての精霊が憑いているという。
しかし、自分にカードの精霊が見えにくい為か、《機械戦士》たちを精霊の姿で見れたのは、廃寮でのタイタンとの一件だけである。
あそこには何やら化け物や闇のデュエリストとなった高田が住み着いていたことから、何か精霊として重要な場所なのかもしれないが……高田の地縛神が破壊してしまった今では、確かめようの無いことだった。
……そろそろ寮に戻ろう、と思って森から出ようと来た道を戻ってオベリスク・ブルー寮へ戻ろうとした時。
「……ん?」
何やら人間二人の話し声が、風に乗って俺の耳へ聞こえてきた。
さて、わざわざこんな夜中に話すような内容だから興味がないわけではないが、それよりも厄介事はゴメンだという気持ちが強く、無視することにする……いつもならば。
だがそれが、二人とも知り合い――それも片方は、厄介な知り合い――の声であるとすれば、無視するわけにもいかない。
どうせ寮に戻っても後は寝るだけだ、と鼓舞して、俺は声のした方向へ向かった。
デュエルアカデミアの森の中で比較的開けた場所である、自然のデュエルスペース。
そこで、二人のデュエリストがデュエルディスクを構えて向き合っていた。
「遊矢!?」
そのうち一人は、今や同級生で少なめになって来ている真紅の制服を着た友人、遊城十代。
「黒崎遊矢、か……今日はお前に用はない。黙って見ているんだな」
あの時と同じ、白いスーツ姿に身を包んだプロデュエリスト――
「エド……?」
俺の前で十代とデュエルをしようとしている人物は、間違えようもなく、先日は礼儀正しい後輩に扮して俺にデュエルを挑んできた、エド・フェニックスだった。
その口調を聞くかぎり、先日のように演技はしていないようだが……?
「十代! 何がどうなってるのか簡単に説明してくれ」
十代に説明を求めると、そういうのが苦手そうな十代のイメージに従い、少し悩んでから手振り身振りを交えて答えた。
「ええと……目の前にいたこのエドっていうプロデュエリストが前にも挑
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