もしもトウカが剣士さんじゃなかったら2
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一晩開けて。
滝の洞窟とやらに行くため、準備とかなにやらが二人ともあったみたいで、少し時間が取れた。だからエルトに一応断って、私はアイデアを実行する為に武器屋に向かうことにした。
剣を使わずに殴り倒すにしても、素手で殴ったらそういう経験のない私は弱いのだし、きっと怪我してしまう。そうしたらいくらたくさん回復アイテムを持っていても迷惑だろうし、痛いのは出来るものなら嫌だったから。
「お、いらっしゃい」
朝、店を開けたばかりらしい。店の筋骨たくましい男が愛想よく声を掛けてくれた。護身用として剣を背負ってきたからちゃんと客として認識されたみたいだ。
「素手用の、グローブのようなものはある?」
知らない人に話しかけるのは勇気が要った。外に出ることがなかったから、養い親や使用人の何人かとしか話したことがなかったから。陛下や姫とお会いしたことはあれど、話のような話もしなかったし。
だから、私の態度が果たして正しいのか?と問われたら答えられない。でも、幸いにも彼は不思議そうに問いかけを返していただけだった。
「……そういうのは防具じゃないのか?」
「関節部にトゲのついたような……保護かつ武器となりうるもの。ある?」
武道家が使うような、という説明をした方が良かったのかも。明らかに戦闘どころか人馴れもしていない私に不信感を抱いたのか、彼はなにやらごそごそと探しながら、
「見たところ兄ちゃん、戦闘経験もロクになさそうだ。そんな武器で戦うっていうなら死ぬぞ?その背中の剣を使った方が懸命だと思うけどなぁ」
と言った。ああ、そのとおり。でも剣で戦って怯える方が死ぬと思うんだ。刃物に深いトラウマのある私は自分が振るうことすら駄目なのだから。
「ボクは死なない。死ぬわけにはいかないから。だけど、剣ではそれを為せないんだ。……どうか売ってはくれないか」
「そうか。……まぁ武器を売るのが俺の仕事だからな。兄ちゃん、好きなのを選べ」
深くは聞いてこなかったことに感謝しつつ、私は見せられた物を眺めた。並べられた「グローブ」はおおよそ私の想像通りの見た目をしている。
私では腕を動かせそうにないようなごついものから、軽そうだけど仕込み武器があって扱えそうにないものとか、いろいろあった。その中でも目を引いたのは手の関節部にトゲのついた、私の考えていたのと寸分違わぬもの。比較的防具に近い構造をしている。提示金額は四百二十ゴールド。
迷わずそれを手に取ると、それを買った。試しもしない、比べもしない姿を見て呆れたのだろうか。彼はお金を受け取るとぼそりと呟いた。
「……ご武運を」
「ありがとう」
その時私は剣にモノトリアの紋章がバッチリ刻まれていて身バレしてるなんて思わなかった
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