もしもルゼルが生まれていたら2
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
自我というのはどこで自覚し、確立するんだろうね。個人差はあると思うけど、俺達兄妹はほぼ最初から異端児だったことは間違いないんだ。
ぼやけた視界、今以上に言うことを聞かない体、理解出来ない言語はまさに赤ん坊の時の記憶だろうね。何故か母親の腹の中での思い出は持ち合わせていないけどね。
一歳。既に俺は弱くて未熟な子供で、なんどか生死の隙間をさ迷っていた頃。トウカがやってきたのはその時だったね。
門の前に捨てられていた哀れな赤ん坊。首には致命傷になりうる程大きなな傷、右目は虚ろで視力はなし。それでも左目には僅かながら理性を伺えたし、俺や母や父を本当の親や兄でないと気づき、でも受け入れて眠る姿は俺に、俺と同じだって気づかせたね。
幸い、モノトリアを捨てて去った者の子孫だったトウカは名実ともに俺の妹になった。俺にはそうじゃないって分かったけど、喋れる年齢じゃなかったし。
俺は彼女を、自分より幼く小さく、そして守るべき妹であると認識して、守らなければと決意した。正直なところ、そういう決意は理性的な判断というよりもどちらかといえば本能的に守らなければと感じたからってのが正しいんだけどさ。建前ってやつ。
古くからモノトリア家に伝わる言い伝えには守護者と「真の」主という関係があるのを知ってたし……本を漁って……多分だよ、俺は一族の悲願である守護者で、最後のモノトリア。そしてトウカこそが陛下や幼い姫ではなく本当の主、つまり「真なる主」であり、この出会いは運命なんだろうってね、感じていた。
モノトリアの歴史は古く、千年を超える。きっとその千年以上前に交わされた約束、契約なんだろうね。トウカの右目になって、トウカを守って、彼女を幸せにする手助けをするってことを、誓ったんだろう。
兄として当然の事を使命にするなんて先祖は少しばかり失礼じゃない?俺は弱かったけど、覚えることは得意だったから、知識を組み合わせれば守れるだろうって考えてたし。……思ってたんだけど。
俺、四歳。トウカは三歳。妹は剣に興味を示し、学び始めた。その才能は凄まじく、瞬く間に技術を吸収すると体力作りに励んだ。
剣、勉強。努力家の彼女は何度だって繰り返したし、何度だって努力したし、覚えるのだって早かった。反復練習を怠らないからあっという間に才能と努力のハイブリッドは師を追い越し、齢五の時には国一番だったよね。
信じてない人は多かったけど、俺は信じてた。そして、何より……俺を守るって、笑ってた。言葉通り、暗殺者からも、従姉からも守ってくれた。
仲のいい兄妹であると思うよ。彼女は幸せそうで、それならいいかもしれないとも思っていたよ。
「私はね、剣を振るうことが楽しいんだ」
「兄上をお守りすることはとっても嬉しいことなんだ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ