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約1つのラベルと心臓
第n+3話 あそこにいるおっさんの見る主人公
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「私だったかー。私はキリの良い年齢の誕生日には連れて来てもらってるわね」
「あーやっぱ行ってんのか」
 夏雄はこういうのは雲の上の世界だった。1度行ったことすら恐らく無いだろう。
(俺のこと覚えてるか自信無ぇ)
「10歳の誕生日の時は地元でいい感じのとこ連れてってもらったしー」
「ほぉ」
「20歳の時は態々東京まで行ったのよ」
「……」
「それで30歳の時はニューヨークまで行っちゃってー」
(30!?)
 夏雄は学生ぐらいに見える美都子に怪訝な表情を見せた。
「んで、4000歳の誕生日に火星行ったわ。エウロパ」
「無茶苦茶言ってんじゃねぇよ」
「無茶苦茶じゃないわよ。火星行ってネコ2世を見てきたのよ」
「誰だよそいつ」
「お待たせしました」
 そんな話をしていると、ウェイトレスが頼んだ覚えの無い飲み物を2つ持って夏雄達のテーブルに現れた。
「カップルログインボーナスのブルーフジヤマです」
「あの、カップルじゃないんですが?」
 夏雄はもらえるものは貰う性格だが、嘘をつくのは好きじゃなかった。
「大丈夫です。騙されたとお思いになって下さい」
「誰にですか」
「それでは失礼します」
 ウェイトレスは配膳を終えるとスッと軽やかにいなくなった。
「炭酸が抜けない内にさっさと飲みましょう」
「いやお前いいのかよ?」
「騙されるのが?」
「いや騙されるってのはよく分かんねぇけど、それ飲んだら認めるってことだぞ?カップルだの何だの」
「カップルはアダ名だからどうしようもないわよ。あなたのニックネームをカップルにしたら一瞬で解決するけど」
「するかよんなこと」
「色恋沙汰はパンデミックみたいなものだからワクチンが来るまで安静にするしか無いわ。結婚は人生の墓場なんて言うから、世界がゾンビパニックになるのよ」
「いきなりどうした」
「ゾンビ映画って、生身の人間は文字通り死んでもゾンビになりたがらないわよね。ゾンビに襲われると一体どうなるのかしらね」
「……え、縁談とか多いのか?」
 夏雄は嫌なことを思い出させてしまったのかと身構えた。
「夏雄君が?」
「だからなんで俺のことをお前に聞くんだよ」
「ん?別に実体験とかでは無いわよ?」
 美都子はきょとんとした表情だ。
「え、あ、そうなのか?」
「他人の恋愛に興味がある他人には結構興味があるし」
 美都子はにっこりと微笑んで、ブルーフジヤマを更に1口飲んだ。
「それはそれでやなやつだな……」
 夏雄は結局ブルーフジヤマのストローに口をつけた。
 それからいかにも手の込んでそうな食べ物を2人で平らげ、ごちそうさまをして料金を払って店を出た辺りで、日本に戻ってきた。
『恋の病の鰻のお上りさん』
 今日もよく分からない付箋を読んで、ゴミ箱に捨て
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