第十二話 数字
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それを見計らい、男性は笑みを浮かべた。
「ああ、そうかよ!」
自慢の槍で、男性の体を貫こうとしたその瞬間。
男性の体は、流れる水のように横にスライドしたかと思うと。
あろうことか、その大剣を、細剣の如く片手で軽々と持ったかと思うと。
「チェックメイトです」
その一言と共に、瞬間的に、その大剣によって、細剣のスキル、スター・スプラッシュが繰り出された。
中段突き三撃、切り払い往復、斜め切り上げ、上段二段撃の計八連撃がスキル通り発動し。
メトゥラシエンのサイズも相まって、男性の体を、一瞬にしてバラバラに引き裂いた。
「……は?」
男性は、事態がよく飲み込めないまま、青く砕け散るエフェクトと共にデータの海へと還っていく。
男性一人がいなくなったことで、他のメンバーが気づいたのか、すぐに、彼の元へと集まってくる。
しかし、その間、彼は装備を変更し。
右手に『聳弧』と呼ばれる白い羽毛のついた真っ白な刀と。
左手に『ウルティオ』と呼ばれる、赤いラインが走る黒いランスを。
それぞれ直剣と、盾として【装備】した。
通常、こういったシステム外の装備は不可能。
持ったところで、スキルは発動できず、無駄になるだけである。
だが、彼は違う。
「では皆様。 ショータイムといきましょうか」
その一言で、その刀で、その槍で。
彼らの想像よりも斜め上すぎる攻撃を、まるでどこぞの無双の如く繰り出し。
わずか6分後には、その場には彼しかいなくなっていた。
システム上で出来ないことを、何故彼は出来たのか。
その秘密は、バグである。
全ての武器スキルを一定レベルまで均等に上げることで、システムに誤認を起こさせた。
スキルスロットにはバラバラのスキルを組み込み、その手に持つ武器を対応した武器の持ち方に持ち変えることで。
意図的にバグを起こし、システムに誤認を起こさせる、という寸法である。
もちろん、それ以外にも武器選択画面で様々な誤認させる要素を出しているのだが。
当然、このバグを知っているのは彼だけで、目撃者は漏れなく死んでいる。
天国の扉でさえ、この事実は知らない。
だが、それでも彼は今、天国の扉率いるDiracに所属している。
さらに、序列二位として不動の地位を築いている。
スカウトされた理由も、本当に偶然である。
PKを終えて、立っていたところに、天国の扉が出くわし、勧誘したのだ。
彼は初め、天国の扉をそのままPKするつもりだったが、目的が早く達成できると判断し、協力したのだ。
そして彼は、特にギルドの動向に興味もなく、ただ、毎夜毎夜、PKを繰り返している。
救済という名の殺戮を。
正義という名の犯罪を。
勇気という名の狂気を。
異型
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