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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#7
SILVER CHARIOTU 〜King Crimson〜
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 青年の意図を察したアラストールも、
その口唇から淡い微笑を漏らす。
「気をつけて、アラストール。手強いわ、あの男」
「うむ、ソレは解っている。紛れもない。
『一流』 の遣い手で在るコトはな」
 己を気遣う少女に、アラストールは悠然とした声で応じる。
 しかし、その裡では。
(うむ。血が騒ぐ、というヤツか……久しく忘れていた感覚よ)
 かつて “彼女” と、幾多の戦場を駆け巡ったアノ時、ソノ時、
確かに感じた熱が、今再びアラストールの心中に甦りつつ在った。
(アノ者、(まご)うコト無き 『一流』
その “技倆” は許より心根に於いてもな。
アレほどの遣い手。ごく稀にしか邂逅出来ぬ)
 心中でそう呟き、紅世の王は眼前で傲然と構える一人のスタンド使いを見る。
「では、御武運を……」
「うむ」
 最後に少女がそう言って、その真紅の瞳を閉じた刹那。
 彼女の纏っていた紅世の黒衣 “夜笠” が、
突如海面を走る波紋のようにザワめいた。
「!!」
「!」
「ッ!」
「!?」
 眼前の騎士を始め、その様子を遠間にみる3人の男達も、
少女の変異に視線が釘付けとなる。
 そし、て。
 黒衣は通常の嫋やかな風合から一転、
さながら激龍の竜鱗(うろこ)を想わせる硬質な質感へと即座に変貌し、
ソレと同時に彼女の火の粉撒く炎髪が逆巻くように立ち昇り、
その全身から紅蓮の炎が多量の不可思議な紋章と紋字と共に迸る。
「!!」
 その刹那の合間に一瞬、少女の背後に垣間見えた姿。
 ソレを彼は、空条 承太郎は視ていた。
 巨大な漆黒の塊を中心に秘め、灼熱の衣たる炎を纏その身に纏い、
紅蓮の両翼を天空に向けて拡げた紅世の王。
“天壌の劫火” アラストール、 ソノ真の姿を。
 まるで、この世界史上最大最強のスタンドを、
眼前で見せつけられたかのように。
 そし、て。 
 静謐な光を称える胸元の球が深紅に染まり、
通常よりも遙かに紅度を増した炎の片鱗を周囲に振り飛ばしながら、
少女は、ゆっくりとその双眸を開く。
 その輝度を遙かに増して、この世に顕現した “本物の灼眼” を。
 そして虹彩の裡で揺らめく真紅の煌めきが、
静かに眼前で屹立する一人の 『スタンド使い』 へと向けられる。
「――ッ!」
 その、有無を言わさぬ強烈な威圧感。
 百戦錬磨を誇る白銀の騎士でさえ、想わずその構えを強固にしてしまう程に。
 開戦の合図も無しに臨戦態勢を執った、否、執らされたスタンド、
銀 の 戦 車(シルバー・チャリオッツ)
 遠方より蒼き波濤が一際大きく鳴り響いた瞬間。 
「待たせたな。白銀の騎士」
 アラストールが喋った。
「いざ、参られよ」
“シャナの声” で。




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