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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#7
SILVER CHARIOTU 〜King Crimson〜
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声を微かに漏らした。





【2】

胡 文 虎 花 園(タイガー・バーム・ガーデン)
 軟膏薬 「万 金 油(タイガー・バーム)」 の売り上げで巨富を得た香港の富豪、
胡文虎により1935年、総工費1600万香港ドルという巨費を投じて建設された庭園。
 1950年代に一般公開されその中心となる高さ44メートル、
7層構造のパゴダを始め、周囲に中国仏教、儒教、また様々な故事や説話を題材とした
ジオラマがコンクリートや陶磁器を用いて多数配置され、
これら地獄や極楽を構成する人物・動物・怪物等の人形はスベテ極彩色に彩られ、
見方によってはグロテスクとも取れる造形をしている
 そのセンスと世界観は香港奇妙ゾーン・ナンバーワンと呼んでも過言ではなく、
まさに狂った道化師の造りし庭といった景観を否が応にも視る者に想起させる。
 その道化師の庭、陶器で出来た巨大な白竜と猛虎が口を開く石段の踊り場で、
白銀の騎士を己の裡に秘める精悍なる 『スタンド使い』 が口を開く。
「さぁ、最初は誰が相手だ? 4人同時でもオレは一向に構わんぞッ!」
 敵とは想えない勇猛極まる声でそう叫び、
不屈の信念に充ちた青い双眸で4者を見下ろす。
「……!」
 その声を聞いた、マキシコートのような学生服を風に揺らす無頼の貴公子が、
闘争心に誘発された微笑を端整な口唇に刻み、
眼上の銀髪の男に向かって前へ出る。
「フッ……まさかDIOの配下に、テメーみてぇな男がいるとはな。
堂々と 「本体」 を晒し、ストレートに戦いを挑んでくるヤローがよ」
 そう言ってレザー製のズボンに両手を突っ込み、
勇壮なるライトグリーンの瞳で男を見据える。
「余計な策や小細工を一切使わねぇ。
初めて出てきた 『正統派のスタンド使い』 か。
面白ぇ、ここはオレがやらせてもらうぜ」
(フッ、空条 承太郎か……凄まじいパワーとスピードとを誇るスタンド、
星 の 白 金(スター・プラチナ)』 願ってもない相手だ) 
 無頼の貴公子の上で佇む銀髪の男も、
同じく闘争心に誘発された笑みを口元に浮かべ承太郎の方へと歩み寄る。
 その次の瞬間。
「……ッ!」
 無頼の青年の前進が、背後からの強い力によって止められた。
「……」
 振り向いた先にいたのは、燃え盛る灼熱の色彩をその髪と瞳に宿した少女。
 その少女が、細く可憐な造形からは想像もつかないほどの力で、
自分の学生服の裾を掴んでいる。
 その鮮烈な姿に似つかわしくない、どことなく儚げな、
まるで狂ったこの庭園の迷い子を想わせる様相で。
「先にケンカを売られたのは私よ。おまえは引っ込んでて」
 鷹揚のない声で事務的にそう告げ、少女は青年の前へと歩み出る。
「オイ?」
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