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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十三話 英雄である事とは……
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委員長が続ける。

「リヒテンラーデ侯は貴族、ヴァレンシュタイン元帥は平民だ。この二人が協力体制にあるのは門閥貴族に対抗するためだろう。二人とも門閥貴族が実権を握れば粛清されると見ていい。その恐怖が二人を協力させていると思う」

「……」
「今回の勅令だが、ヴァレンシュタイン元帥が望んだものだろう。リヒテンラーデ侯は門閥貴族と対抗する以上平民の支持が必要だと判断し賛成した。決して心から改革を望んでいるわけではあるまい」

レベロ委員長の言葉にホアン・ルイ委員長、トリューニヒト議長が頷いている。私も、いや軍部もそれについては同意見だ。ビュコック司令長官がレベロ委員長に問いかけた。

「つまり内乱終結後、リヒテンラーデ侯とヴァレンシュタイン元帥の間で権力闘争が始まる、政府はそう考えているということですかな?」
「そうなるだろうと考えている」

レベロ委員長がトリューニヒト議長と顔を合わせた後答えた。釣られるように皆顔を見合わせた。帝国はこれからしばらくの間混乱状態になる可能性がある、そう考えているに違いない。しかし本当にそうなるのだろうか? ヴァレンシュタイン元帥がそれを許すのか?

「ヴァレンシュタイン元帥が実権を握れば、改革は実施されるに違いない。捕虜交換も実行されるだろう。問題はリヒテンラーデ侯が実権を握った場合だ。その場合どうなるか?」

トリューニヒト議長が周りに問いかけた。ボロディン本部長を始め軍幹部が私を見る、答えねばなるまい。

「改革は廃止されるか、形だけのものになるのではないでしょうか? ただ捕虜交換に関して言えば、リヒテンラーデ侯が実権を握っても実行されるのではないかと思います」

「何故そう思うのかね、ヤン提督」
トリューニヒト議長が問いかけてきた。何処か面白がるような表情が気に入らなかったが答えた。

「門閥貴族との内戦で軍は再編が必要となります。同盟と同様で捕虜が返還されれば再編もスムーズに行く。それにリヒテンラーデ侯が政権を握ればヴァレンシュタイン元帥は失脚する事になります。平民達の不満を宥めるためにも捕虜交換を行なうのではないでしょうか」

トリューニヒト議長は私の言葉を頷きながら聞いていた。そして私が話し終わるとゆっくりとした口調で話し始めた。

「ならば捕虜交換に関しては問題は無いと判断して良いだろう。ところで反乱軍が勝つという可能性は無いのだろうね?」
トリューニヒト議長の言葉に軍人たちの間から苦笑が沸いた。それを見たトリューニヒト議長は一つ頷くと話を続けた。

「では問題はヴァレンシュタイン元帥が政権を握った場合だ。帝国が改革を実行した場合、何が起きると思うかね?」

何が起きるか、トリューニヒト議長のその言葉に皆顔を見合わせた。
「ヴァレンシュタイン元帥は
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